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コンクリートの枠で山肌を固める作業が続く土砂崩れ現場=北海道厚真町 夜が明けると、森林ごと崩落した山々の姿があらわになった=2018年9月6日、北海道厚真町 地震で停電した札幌市中心部 ふん尿からエネルギーを得るバイオガス関連事業のプラント=北海道上士幌町、ドリームヒル バイオガス事業の余剰熱を利用したマンゴー栽培=北海道鹿追町、環境保全センター 神戸新聞NEXT
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コンクリートの枠で山肌を固める作業が続く土砂崩れ現場=北海道厚真町

夜が明けると、森林ごと崩落した山々の姿があらわになった=2018年9月6日、北海道厚真町

地震で停電した札幌市中心部

ふん尿からエネルギーを得るバイオガス関連事業のプラント=北海道上士幌町、ドリームヒル

バイオガス事業の余剰熱を利用したマンゴー栽培=北海道鹿追町、環境保全センター

神戸新聞NEXT

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コンクリートの枠で山肌を固める作業が続く土砂崩れ現場=北海道厚真町

夜が明けると、森林ごと崩落した山々の姿があらわになった=2018年9月6日、北海道厚真町

地震で停電した札幌市中心部

ふん尿からエネルギーを得るバイオガス関連事業のプラント=北海道上士幌町、ドリームヒル

バイオガス事業の余剰熱を利用したマンゴー栽培=北海道鹿追町、環境保全センター

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 最大震度7を記録した昨年9月の北海道胆振東部地震は、全国初の全域停電「ブラックアウト」を引き起こした。大規模な石炭火力発電所が止まったのをきっかけに、道内の発電所が連鎖的に停止。物流はまひし、テレビやインターネットなどの情報も断たれ、道民530万人が孤立した。東日本大震災で指摘された一極集中型の電力システムのリスクがあらわになった瞬間だった。とりわけ食品事業者や酪農家は甚大な停電被害を受けた。苦い教訓をばねに、恵まれた自然エネルギーを生かす自立・分散型の経済や地域づくりが進む。(辻本一好)

 むき出しの山肌をコンクリートの枠で固める復旧工事。崩壊した斜面が1キロ続く所もある。植栽なども完了するのは2024年3月という。

 震源地となった厚真町。激しい揺れで山々の斜面は森林ごと崩れ、ふもとの住居をのみ込み田畑に流れ込んだ。地震による死者44人のうち37人が厚真町の犠牲者だった。

 2度目の冬を迎えた町では、今も約340人が避難生活を送る。ブランド米「ななつぼし」などを作る農地約155ヘクタールが被災した。膨大な土砂を取り除いて全て営農再開するのは20年度になる見通しだ。

 町は住民の意見を集約して本年度中に復興まちづくり事業計画を作成する。高齢化が進む町では若者たちがまち再生をけん引する。漁業をしながら町内外の人をつなぐ「イチカラプロジェクト」に取り組む澤口研太郎さん(31)もその一人だ。

 「厚い真心の町と言われてきたこの町が大好き。ボランティアの人々からもらったいろんな視点を生かして、農業や林業の仲間と地域をつくっていきたい」と力強く語る。

■食品廃棄など136億円

 厚真町など道央地域を激しい揺れが襲ったのは昨年9月6日午前3時7分。北海道電力の苫東厚真発電所が損傷で停止。道内で使っていた電力の半分が一気に失われて需給バランスが崩れ、他の発電所も止まり、道全域の295万戸が停電した。

 影響を真っ先に受けたのがビルのエレベーターで、道内の9千台が停止した。中でも厳しい状況に直面したのがタワーマンションだった。

 札幌市にある「ザ・タワー中島公園」管理組合理事長の今江敏明さん(75)は、鳴り響く警報の内容確認などのため、30階まである真っ暗な階段を行き来した。「外から見て火事はないと思ったが、防火扉を確認せねばと必死だった。今考えるとよく上がれたと思う」と振り返る。

 水道が止まったため、地下のタンクから取ったペットボトルの水を住民にトイレ用に配り続けた。幸い12時間で停電は解消した。気になったのは部屋から出てこない人が多かったことだ。70歳以上の入居者が多く、再び階段を上がるのは難しいと考えた人が少なくなかった。

 道マンション連合会のアンケートでは停電時間は平均27・3時間、最大64・7時間だった。「エレベーターが動かないのは致命的」「電気が全てを支配していることを思い知らされた」などの声が寄せられた。

 都市に増えるタワーマンションは災害時に一度に多数の住民が危機的状況に陥る問題が指摘されている。冬季や長期の停電も想定して、住民で電気や水に関するマンションの機能を確認し、対策を考えていくことが必要だと改めて思う。

 停電の実害が大きかったのは食品事業者だ。生活協同組合コープさっぽろ(札幌市)は108の店舗とともに三つの食品工場が停止した。夜が明けると、気温の上昇で腐敗し始めた調理途中の食品を袋に詰める作業が始まった。冷蔵庫にある食材の処分にも追われた。

 北海道の商工業被害のまとめでは、こうした停電による食品廃棄などの二次的被害は約136億円で、地震被害の約120億円を上回る。このほか、停電による営業取りやめなどの影響額は約1318億円とされている。

 ブラックアウトの教訓からコープさっぽろは、全ての店舗・宅配センターへの非常用電源設置と、食品工場への自家発電導入を進めている。

 さらに、関連会社のトドック電力(札幌市)は、食品企業に発電設備を設置して電力・熱を提供するサービス事業を始めた。普段は省エネに役立ち、停電時に電力・熱を確保する事業継続計画(BCP)対策ともなる。BCPのノウハウを持つ東京都市サービスと連携し、まず同コープの工場に設置し、食品企業にサービスを展開していく考えだ。

 「電気がないために何もできなかった悔しさを忘れず、地域の電源確保に貢献したい」と同コープの中島則裕専務理事は意気込む。

 今回のブラックアウトは、コスト優先で電源を集中させた電力システムを要因とする「人災」との批判の声も強い。分散型への電力改革は不可欠だが、事業者のエネルギーの自立力を高めることも重要だ。

■エネルギーの未来形

 日本の生乳生産の半分を担う酪農も大打撃を受けた。非常用電源がない牧場では搾乳機が使えず、搾乳できても牛乳工場が停止していて廃棄するしかなかった。こうした被害は北海道全体で20億円以上。搾乳できずに乳房炎になる牛が1万頭を超えるなど後遺症に苦しめられた。

 影響は、ふん尿などを発酵させてエネルギーと良質な肥料を作るバイオガス事業にも及んだ。

 資源循環とエネルギーの地産地消のための安定した電源として、自治体やJA、エネルギー企業なども連携して道内各地で導入されている。

 十勝地方の鹿追町はバイオガスプラントで計1040キロワットの発電機を稼働させている。バイオガスから作る水素で燃料電池自動車やフォークリフトを動かし、余剰熱をマンゴー栽培などに活用している。

 地震の被害はなかったが、「予期せぬトラブル回避のため」との北海道電力の要請で発電を止め、ふん尿の受け入れもできなくなった。道内全域の太陽光や風力発電も停止を余儀なくされた。井上竜一担当係長は「せめて、役場などの重要施設、酪農の現場にこの電気を送れる地域分散型の仕組みが要る」と訴える。

 隣接する上士幌町は、災害時に町内の送電網を独立運用できる「マイクログリッド」の確立に地域の電力小売り業者らと取り組む。ブラックアウトの教訓を基に、経済産業省の支援事業を活用してバイオガスによる電気の地産地消を進める。町企画財政課の老月隼士主査は「地域の電源を自立に生かし、蓄電池の普及にもつなげていきたい」とエネルギーの未来形を見すえる。

 電気が消えた日に見えた脆弱(ぜいじゃく)な電力システム。この国が抱えるエネルギーの課題を体感した北海道の人々が描こうとする地域デザインを、私たちも共有していかねばならない。

 兵庫で進む地域の自然エネルギーの取り組みも、電気への依存度が高まる社会の姿を理解した上で、災害に強いまちづくりの視点を基本に進めていきたい。

【2018.9.6 北海道胆振(いぶり)東部地震】北海道胆振地方中東部を震源とするマグニチュード6.7の地震。北海道電力苫東厚真発電所の3基のうち2、4号機が緊急停止。地震から18分後に1号機が停止した後、道全域が停電となった。泊原発も外部電源を一時喪失した。水力発電の電気を使って他の火力を順次稼働し、8日には全域への送電を再開した。

2019/11/28
 

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