「これ、なにー」
親子連れの声が澄んだ冬空に響きわたる。阪神・淡路大震災の災害復興住宅が立ち並ぶ神戸市中央区のHAT神戸地区。その一角、なぎさ公園に午前5時46分を指し示す“時計”がある。
被災した子を励まそうと2001年に設置された長さ約30メートルのモニュメント「ゆめ・きずな」の一部。神戸や阪神間の被災地の児童100人の作文や絵を基に、兵庫県宝塚市を拠点とする美術家の故元永定正さん、中辻悦子さん夫妻が制作した。
時計の原画を描いたのは、西宮市の男子児童。自宅マンションが半壊する被害を受けたという。あの震災を風化させない-との願いを託すモニュメント全体の象徴として選ばれた。
「この時刻に触れることは震災を知る第一歩」と中辻さんは話す。地震発生時刻で止まったままの時計が、その時を静かに伝え続ける。(大森 武)
2020/1/7