「あの時」と同じ夜明け前。空にだいだい色の光がゆっくりと差し、高層ビルのシルエットが浮かび上がった。神戸市長田区の新長田駅南地区。阪神・淡路大震災の復興再開発事業が唯一続く街の25年の輪郭だ。
20・1ヘクタールに約2710億円をかける全国最大規模の再開発事業。2003年度末に完了する計画は延びに延びたが、ビル44棟のうち41棟が建ち、残りも整備方針や事業者が決まるなど、ようやくめどが立った。
市によると、地区内の居住人口は震災直前の4456人から約6千人に増加。市と兵庫県の合同庁舎もでき、神戸の「西部副都心」の基盤は整いつつある。
しかし地域商業を支える昼間人口は16年時点で震災前より3割以上減少。被災で店を閉じた高齢の店主も多く、巨費を投じた商業エリアににぎわいは戻らない。それでも「個々の必死の頑張りを次につないでいかなくては」。事業に長く関わった男性(63)は未来を見続ける。(吉田敦史)
2020/1/14