“昭和”を感じさせる、王冠で栓をするタイプのジュース瓶。緑色のラムネ瓶も今や珍しい。銘柄のラベルはどれも薄くなったり擦り切れたり。25年以上使用された風格が漂う。
阪神・淡路大震災により被害を受けた神戸市長田区の清涼飲料水メーカー、兵庫鉱泉所。震災時、すでに廃業していた同業者仲間から、各社の瓶を受け継いで使っていた。
地震のとき「倉庫の瓶は互いを支え合うように傾いて、割れなかったんや」と秋田健次代表。現在使う約3万本のうち、3分の1が震災を乗り越えたものだ。
地元の駄菓子屋や銭湯、飲食店の多くが震災を機に店を閉じ、売り上げは激減した。それでも地域の子どもたちのためにラムネやサイダーなどを製造し続ける。
再利用される瓶の回収率は9割以上。秋田代表は「戻ってくるのが当たり前やと思ってる」と笑顔で話す。そして、地元で愛されてきた味を、これからも作り続ける。(斎藤雅志)
2020/1/8