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高級酒米「山田錦」の田んぼの土を使った酒器。独特の白が目を引く=加東市秋津
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高級酒米「山田錦」の田んぼの土を使った酒器。独特の白が目を引く=加東市秋津
工房で作陶に励む藤村拓太さん=加東市秋津
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工房で作陶に励む藤村拓太さん=加東市秋津

■土地が育むロマンを味わう 

 ほのかに輝く白が目に優しく溶け込んでくる。手に持った瞬間から、つるっとした肌触りが心に和む。

 酒米の王者「山田錦」の田んぼの土と、その稲わらを焼いた灰を釉薬(ゆうやく)に混ぜ合わせて焼き上げた酒器。「白は米のイメージ。山田錦で醸した酒を飲みながら、土地が育んできたロマンを味わってもらえれば」と、陶芸家の藤村拓太さん(40)=兵庫県加東市=は語る。「使うほどに酒が染み込み器の表情も豊かになるんです。愛着も湧いてきますよ」

 加東市東部の雄峰「秋津富士」のそばに藤村さんの仕事場「東条秋津窯」がある。

 加東は山田錦の特産地。東条地域は最高峰の格付けを示す「特A-a」のエリアが広がる。窯元がある秋津地区もそう。東条川に沿って広がる谷あい特有の寒暖差と日当たりの良さ、神戸層群と呼ばれる独特の地質が高級酒米を育む。藤村さんが作る酒器の土はこの秋津の田んぼを利用する。

 土は地元の酒米生産者から提供を受ける。田んぼの土と焼き物従来の土との配合量をはじめ、釉薬の調合、ろくろの成形の仕方、焼き加減など、何度も試行錯誤を重ねた。酒米産地から生み出された器は、日本酒ファンの琴線をくすぐる。

    ◇

 窯は40年前、藤村さんの父が築いた。直後に拓太さんが誕生。父は高校生の時に亡くなったが、その背中を見て陶芸家を志す。ただ、藤村さんは酒をほとんど飲まず、かつては日本酒に関心がなかった。

 7年前、加東市内で開いた展示会で、来場者のひと言にインスピレーションを受けた。

 「秋津っていい酒米が収穫できる地域ですよね」

 地の利を生かす焼き物作りを発案し、地元で展示、販売を開始した。3年前には、山田錦の酒器を紹介するホームページを見た東京の大手酒販店「はせがわ酒店」から受注依頼が届いた。全国の銘酒を取り扱い、左党に人気の店から注目され、酒器は都内の高級飲食店でも使われるようになった。藤村さんの作品はとっくり1本で1万1千円の値が付く。

 加東生まれの逸品をPRしようと、加東市観光協会が協力。秋津窯での酒器作り体験ツアーを企画する予定だ。市内の酒蔵「神結酒造」の清酒とのセット販売も視野に入れる。

 「思えば父は日本酒が好きだった」と藤村さん。「みなさんが酒器を手にする姿を見て少しは喜んでいるかな」。指先に集中し、ろくろを回していく。(中西大二)

【東条秋津窯】東条秋津窯(加東市秋津)で藤村拓太さんが手掛ける山田錦の酒器は、ぐいのみ、スリムカップ、片口、とっくりで、大小さまざまな形がある。ビアカップは山田錦の土を使用せず、わら灰の釉薬のみ。値段は4千円~1万5千円。オーダーメードもできる(値段は要相談)。

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