全国で激しい雨による災害が相次ぐ。「レベル5大雨特別警報」が発令された8月の千葉豪雨では、雨水が排水能力を上回って下水道などからあふれる「内水氾濫」が発生し、死者13人と多数の住宅被害を出した。大雨の発生回数は増加傾向にある中、被害を軽減するハード対策とともに、浸水想定の公表や、その情報をもとにした住民の備えも大切となる。(井沢泰斗)

■台風時、海から逆流ケースも
 被害想定区域、公表は3割弱

 雨水は通常、側溝から地中の雨水管(下水管)を通り、河川や海に排出される。しかし、線状降水帯などで短時間に激しい雨が降ると、排水能力が追いつかずに市街地が浸水する。また、台風時に大雨や高潮などで水位が上がり、水が逆流して街中へあふれ出るケースもある。

 兵庫県など、広い範囲に被害をもたらした2018年9月上旬の台風21号。JR神戸駅南東では、大雨と海水の逆流で広い範囲が浸水した。

 「水が上がってきた」。地元消防団の石井康裕さん(63)は、団員の連絡で駅南東約400メートルにある防潮鉄扉に駆けつけた。鉄扉の向こう側は腰の高さまで水位が上昇し、乗用車が水没していた。

2018年9月の浸水被害を振り返る地元消防団の石井康裕さん(左)と井上隆昭さん=8月28日、神戸市中央区東川崎町1

 団員たちは車内の男性の救助や、周辺に住む高齢者の安否確認に奔走。石井さんは「水害は幼少期から経験してきたが、あそこまで浸水したのは初めてだった」と振り返る。

 港湾に面する神戸市の中心市街地は地盤が低く、たびたび内水氾濫に悩まされてきた。市は18年の被害を受け、海への排水能力を高めた「新東川崎ポンプ場」や、直径2・2メートルの雨水幹線(トンネル)を同駅周辺に整備。三宮・元町エリアでも15年までに3カ所の雨水ポンプ場を整備しており、神戸駅周辺の2カ所と合わせて都市部の計約260ヘクタールをカバーしたとする。

 ただ、今年8月の千葉豪雨では、千葉市で1時間雨量が最大115ミリを記録した。神戸市下水道部の担当者は「浸水対策で想定する雨量は1時間100ミリ程度。単純比較はできないが、千葉のような雨の場合『大丈夫』とは言い切れない」と明かす。

腰の高さまで冠水した交差点で動けなくなった車=2018年9月4日、神戸市中央区東川崎町1

 国土交通省によると、都市部の下水道の設計は一般的に1時間50ミリの雨を想定する。しかし、気象庁の統計をもとに全国でそれ以上の大雨が降った回数を10年ごとに平均すると、1976~85年の226回に比べ、2016~25年は339・7回と大きく増加した。

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 豪雨リスクが高まる一方、ハード整備のみの対策には限界がある。求められるのは住民自身の備え。ハザードマップで自宅付近や通勤、通学ルートの浸水想定を確認し、災害時の避難行動につなげる必要がある。

 自治体の情報公開も欠かせず、21年の水防法改正で、下水道による浸水対策を行う自治体は、想定最大規模降雨による「雨水出水浸水想定区域」を指定し、公表を義務付けられた。

 しかし、対策は進まず、国は今年8月、あらためて指定に取り組むよう通知した。兵庫県によると対象となる県内38市町のうち、「公表済み」は3割に満たない11市町にとどまる。県上下水道課は「過去の大雨をもとに独自のハザードマップを作成した市町もある」としつつ、「まだ未着手や検討中のところもあり、公表を働きかけていきたい」とする。

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■8月の千葉豪雨、アンダーパスで犠牲者 タイヤ半分の水深、エンジン停止の危険

 相次ぐ豪雨災害で、車を運転する際の備えが注目されている。道路が冠水した場合について、日本自動車連盟(JAF)は「タイヤが半分浸水しただけでもエンジンが停止する危険性がある。早期に避難の判断を」と呼びかけている。

 8月の千葉豪雨では、3千台以上の車両が水没して路上に取り残され、アンダーパスでは犠牲者も出た。JAF兵庫支部交通環境係の上原伸公(のぶたか)さん(61)は「警報級の大雨が予想される時点で運転を控えるべき」とした上で、「アンダーパスや高架下など危険な場所を把握しておき、大雨時には絶対に近づかないこと」と注意を促す。

 それでもゲリラ豪雨などで道路が冠水したら、どうすれば良いのか。上原さんは、水が縁石程度(15~20センチ)の高さになった時点で「安全な道路に避難するべき」とする。

 さらに、タイヤの半分の高さ(30センチ程度)まで水につかるとマフラーなどから水が入り、エンジン停止の恐れがある。ドア下部(60センチ程度)まで水が上がると脱出できない可能性もあり、車内の取り出しやすい場所に窓ガラスを割るハンマーを常備しておくことも重要という。(井沢泰斗)