
2020年東京五輪の代表選考が懸かった柔道グランドスラム大阪大会の最終日。スタッフや報道陣が慌ただしく行き交う取材エリアで、優しい言葉を耳にした。
「勉強もしないといけない、と人に言うつもりはなくて。ただ、愛せるものがあるのはすてきなこと。私にとってはそれが勉強と柔道だった」
女子78キロ超級で銅メダルに終わった朝比奈沙羅(パーク24)だった。
東京都出身。昨年の世界選手権では女子最重量級で日本に8年ぶりの金メダルをもたらした。一方で医師の両親を持つ23歳は机に向かい続け、独協医大の医学部医学科のAO入試に今秋合格。文武両道で自国開催のひのき舞台を目指してきた。
だがこの日、けがによる練習不足も響いて力及ばず。進境著しい19歳の素根輝(環太平洋大)に、優勝と五輪代表内定を許した。
勉強との両立は並大抵の努力ではできない。それでも競技も続けるという。朝比奈は、愛せるものが二つある幸せをかみしめている。(藤村有希子)
