
新型コロナウイルスの感染拡大は収まらず、部活動に青春をささげる中高生の多くが練習できないでいる。積もる不安は日々子どもと接する指導者も同じだが、下を向いてばかりはいられない。サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」を経験し、今年から姫路女学院高(旧播磨高)を率いる米津美和監督(40)の言葉に耳を傾けた。(聞き手・有島弘記)
-着任後すぐの兵庫県高校新人大会で準優勝。『さあ、ここから』というところで活動休止になった。
「本当にそうですよ!」
-とはいえ、着手したスタイルは。
「まずはサッカーの原理原則。目的からしっかり逆算してできるように。ゴールを奪う前にボールを奪わないといけない。そしてパスを正確につながないといけない。それぞれの局面で工夫できるよう、練習に必ず目的を盛り込んでいる」
-手応えは。
「まだまだ。ただ、とにかく一生懸命にやるところから、しっかりハテナ(?)を持つようになった。徐々に質問してくる回数も増えた」
-なぜ、原理原則が大切なのか。
「スーパーな選手ほど、原理原則を徹底している。トラップ一つにしても意味を持ち、(INAC神戸時代の同僚で元日本代表の)澤穂希さんは『攻撃したいからボールを奪う』と常に言っていた。つまり、勝つためにボールをどう取るか。テクニックどうこうではなく、考え方ですね」
「在籍当時のINAC神戸はとにかく縦に速く、勢いのあるサッカーだったが、(澤さんらの加入後)頭を使うサッカーを融合させ、すごく楽しくなった。早く知っていれば…と思うほど。だからこそ、今の選手たちに経験してほしい」
-指導できない今、教え子たちの過ごし方は。
「筋トレをやるように言っているが、学校の課題がたくさんある。外に出ることも強要できない。再開した時にしっかりやっていきたい」
-日々のコミュニケーションは。
「部活のLINE(ライン)グループで。イメージビデオも送り、この1年の攻撃、守備のコンセプトを伝えた。主になでしこリーグや、なでしこジャパンの映像を切り取って」
-伸びる選手と伸びない選手の基準は。
「素直であるか、素直でないか」
-そこを踏まえた上で、再開後の選手、指導者の心構えは。
「選手が自分の意見を持ち、主張することは大事だが、いろんなものを取り込める容量が大きければ大きいほど、すぐに吸収できる。うまくいかず、最初は人のせいにする選手であっても、一番敏感な試合に出る、出ないに影響してくると気付くもの。だから(指導者は)言い続ける、諭し続けることが大事」
【米津美和】よねつ・みわ 1979年生まれ、大阪府吹田市出身。短大などを経て2004年、サッカー女子のINAC(現INAC神戸)にFWとして入団。翌年、Lリーグ(現プレナスなでしこリーグ)2部の得点王に輝き、1部昇格に導いた。29歳の09年に初の日本代表入り。11年シーズンの全日本女子選手権2連覇を最後に現役を引退し、19年までINAC神戸U-15の監督を務めた。大阪・茨木西高では1学年先輩でお笑いコンビ「南海キャンディーズ」のしずちゃんとプレーした。40歳。
