柔らかな表情も動きも、兄とそっくりだ。世界ボクシング機構(WBO)ミニマム級元王者、山中竜也さんの妹菫(すみれ)は今春に相生学院高を卒業し、6月のプロテストを目指して真正ジムでトレーニングに励む。6歳上の兄が世界王座から陥落し、引退したことにショックを受けて一度は競技を離れたが、今年の年明けに1年半ぶりに復帰。18歳のサウスポーは「絶対に世界チャンピオンになると決めて戻ってきた」と大きな背中を追う。(藤村有希子)
妹は胸が張り裂けそうだった。2018年7月、世界王者として2度目の防衛戦に臨んだ竜也さんがフィリピン選手に判定負けし、病院に搬送。急性硬膜下血腫で現役を退いた。同じ真正ジムで小学3年から鍛えてきた菫だったが「怖くなった」と競技から遠ざかった。
しかし兄の試合映像を見るうちに「余計なパンチをもらわない。12ラウンドが終わるまで足も頭も動かせるスタミナがすごい。同じように戦いたい」との思いが湧き、今年1月に本格復帰した。
今では介護のアルバイトの傍らでトレーニングし、自身の動画を兄に送っては助言を仰ぐ日々。ジムの先輩で世界ボクシング協会(WBA)スーパーバンタム級元王者の久保隼には、時折ミットで受けてもらっている。
6人きょうだいで5番目の菫に対し、最年長の竜也さんは「パンチ力と気持ちの強さがある。世界チャンピオンになって、僕より防衛を重ねてほしい」と期待。ジムの山下正人会長は「道半ばでやめた兄の志を受け継いでくれたら」と話す。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、プロテスト受験が後ろ倒しになる可能性もあるが、根気強く練習を続ける。目指すのは最軽量のアトム級での活躍。146センチのホープは「理想のボクサーであるお兄ちゃんを超えるところまでいきたい」と強気をのぞかせた。









