
須磨学園高時代に全国高校駅伝初優勝に貢献し、実業団の豊田自動織機でも長距離選手として活躍した脇田茜さん(32)は現役引退後、管理栄養士として支える側に回った。新型コロナウイルスの影響で活動自粛が続き、体調に不安を抱くアスリートが増えている今、自身の経験を踏まえ、正しい知識を学んで心身のバランスを保つ大切さを強調する。(聞き手・金山成美)
-24歳で引退するまで、競技に打ち込んだ。
「ずっと走っているタイプだった。五輪に行けたら、それだけでいいと思っていたほど。故障が多かったが、食や体のことを学ぼうと思わなかった。練習だけが強くなる要素じゃない。ちゃんとした知識を持っていればと、今になって思う」
-健康に向き合う重要性を痛感している。
「チームメートの中には欠食する人もいた。体が軽い方がいいと実感すると、『速く走れるならいい』と食欲を我慢できてしまう。私はよく食べた方だが、当時は走ってばかりで吸収しきれていなかったのではないか」
「一番言いたいのは、女性アスリートの生理のこと。私は生理が止まっていた時期に『面倒くさいからいいか』くらいに割り切っていたが、重大な問題。疲労骨折も多くなる」
-学校が休校中で、自宅で料理をする中高生らも多い。
「ビタミンやミネラルを取らないと体の機能がうまく働かない。取ったカロリーをエネルギーとして使えるよう、野菜、ご飯、肉や魚といったタンパク質など、いろんなものを食べてほしい。主菜、副菜と多くの種類を作るのが面倒なら、肉と野菜をたっぷり一緒に炒めたものでもいい。レンジも活用してみて」
-練習で気を付けることは。
「長距離走なら一人でもできるが、今は外に出られる時間も短いので、体幹など自分の弱いところを鍛える時間に充ててほしい。私はけがをして走れなかった時、補強運動をやり、故障明けに自己ベストが出たこともあった。インターネットでいろんな人が動画を上げているので、参考になる」
-大会が次々に中止、延期となり、目標を見失う選手もいる。
「陸上人生で一番記憶に残っているのは、全国高校駅伝の優勝。すごくうれしかった。その年代でしか経験できないことがあるので、つらい思いをしているだろうと胸が痛む。精神面も重要なので、誰かに相談してもいい。私は一人一人に合った栄養指導をしながら、ちょっとした悩みも打ち明けてもらえるような存在になりたい」
【わきた・あかね】1987年、神奈川県生まれ。小学3年から神戸市に移り、同市立長坂中で陸上を始める。須磨学園高1年時の全国高校駅伝でアンカーとして初優勝に貢献。卒業後は豊田自動織機に入り、2007年の世界陸上女子1万メートルで15位。マラソンで12年のロンドン五輪出場がかなわず、24歳で引退した。昨春、管理栄養士の資格を取得。藤田整形外科・スポーツクリニック(同市須磨区)に勤務し、9人制バレーボール女子のデンソーテン(同市兵庫区)でも栄養指導にあたる。32歳。同市灘区在住。
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