10-15。2回戦の第1クオーター(Q)は、ビハインドを5点にとどめた。「満点の滑り出し」と兵庫コーチの高松一人。
制限時間の24秒を目いっぱい使う攻撃が、効果を生んでいた。
試合全体を通して自分たちの攻撃回数は減ってしまうが、同時に、福岡に与える時間も減る。それが狙いだ。
「ロースコアの競り合いに持ち込めば兵庫に勝機がある」と、監督の吉川公明は考えた。
第2Q、滝井亜里沙(園田高)に代わって、沢田悠(市尼崎高)がボールを運び始めた。
怒られ役といえば滝井だが、国体メンバーで唯一、監督吉川と同じ市尼崎高に属する沢田も、似たような役回りだった。
実は沢田も、国体直前合宿での「寝坊組」。夕方に部屋でつい眠ってしまい、以後の練習では「何をしても怒られる」という憂き目に遭った。
そんな「もう一人の怒られ役」は171センチの上背に似合わず俊足。最大の武器は跳躍力を生かしたジャンプシュートだ。「ドリブルから真上に跳べる」と吉川は評する。
尼崎市立小園中ではバスケットの傍ら、市内陸上大会の走り高跳びに出場し、大会記録にあと1センチと迫った実力を持つ。
「抜かれるのも怖い」と離れ気味に守る福岡のエース、森ムチャ(中村学園女高)の目前。
「やったろう」。気迫あふれる沢田が3点シュートに挑んだ。20-18と逆転に成功した。
続いて3点ラインのやや内側。ドリブル、細かなフェイクから、垂直に跳び上がった。ボールは高い弧を描き、リングにすっぽりと収まった。
前半は24-26で終了。
理想の流れで折り返した。
だが後半。
ガードとして再登板した滝井のパスが、読まれ始めた。
=敬称略。肩書、所属は当時=
(藤村有希子)
【あらすじ】2006年秋の兵庫国体バスケットボール少年女子。選抜メンバーを組んだ地元兵庫は、最大のヤマ場と捉えていた強豪・福岡との2回戦に挑んだ。









