
雲行きが怪しい。
2回戦第3クオーター(Q)、兵庫・滝井亜里沙(園田高)のパスは、福岡の大庭久美子(九州女高、現福岡大若葉高)にカットされ失点した。
「うわっ、やってしまった」と滝井。
またスチールされる。相手エースの森ムチャ(中村学園女高)にシュートを許した。
さらにドリブルをチェックされ、ボールを失う。
滝井はベンチに下げられた。「そりゃ、そうだよな…」
◇
38-51
最終第4Qを前に、難敵の福岡に13点のリードを奪われていた。
だが、兵庫の主将山下朋美(須磨学園高)は泰然としていた。
「まだいける。全然」
ほかのメンバーも同じ思いだった。
沢田悠(市尼崎高)が攻撃時にリバウンドを死守。河合敬子(夙川高)、山下とパスをつなぐ。
最後はシューター山中美佳(神戸龍谷高)に託された。角度のない左から、3点シュート成功。
コーチの高松一人が「インサイドもできるし、ゲームメークもできる」と評価する万能型の山下は、森相手にドライブにも挑戦した。トップから突き進んで得点。
並外れた跳躍力で沢田がまたオフェンスリバウンド。球を受けた山下はゴールと森を背に、後ろ向きシュートを沈めた。
41-51
43-51
58-62
「楽しい」とベンチの広瀬真希(須磨学園高)。「一丸となって応援して。シュート1本入るたびに喜ぶのは初めて」
兵庫の12選手は6校から選抜され、いわば寄せ集めだった。しかし「6チームが手をつなぎ始めたのかもしれない」。
監督の吉川公明は見えない輪を感じていた。
=敬称略。肩書、所属は当時=
(藤村有希子)
【あらすじ】2006年秋の兵庫国体バスケットボール少年女子。選抜メンバーを組んだ地元兵庫は、最大のヤマ場と捉えていた強豪・福岡との2回戦に挑んだ。
