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神戸市西区平野町に計画されているサッカーグラウンドの完成イメージ図(一般社団法人マイスター提供)
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神戸市西区平野町に計画されているサッカーグラウンドの完成イメージ図(一般社団法人マイスター提供)
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サッカーグラウンドとクラブハウスの建設予定地(小型無人機で撮影)=神戸市西区平野町(撮影・辰巳直之)
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サッカーグラウンドとクラブハウスの建設予定地(小型無人機で撮影)=神戸市西区平野町(撮影・辰巳直之)

 高校サッカーの名門、滝川第二高校のOBらでつくる一般社団法人「マイスター」が、神戸市西区に環境配慮型のサッカーグラウンドを整備する。早ければ来冬に完成し、地域住民にも開放する。一体、どんな施設になるのだろうか。

■田園地帯に

 建設予定地は、神戸市西区平野町にある。山や田畑に囲まれ、取得した土地の隣にはブドウ農園が広がる。神戸市のベッドタウンにつながる市営地下鉄・西神中央駅からは車で西に約15分、神戸市と明石市を結ぶ第二神明道路「玉津インターチェンジ」からは北に約10分かかる。

 開発面積は約9100平方メートル。現在は雑草が生い茂るが、約4千平方メートルを人工芝のサッカーコートに造り替え、2階建てクラブハウスと芝生広場、駐車場を併設する。

 この規格を聞くだけでは、「環境配慮」はイメージできない。神髄はどこにあるのか。プロジェクトを主導する同法人理事、井口洋平さん(36)の説明に耳を傾けた。

■環境志向

 まず、人工芝コート自体に仕掛けがあるという。「ピッチの下にオランダの新しいグリーンインフラを入れます。雨水を貯水できるシステムです」

 グリーンインフラ? 詳しく聞いてみると、コートの下を約10センチ掘り下げ、雨水をためる空間をつくり、水の蒸発を促すシステムも組み入れる。目的は太陽光で熱せられた人工芝の冷却で、自然の土壌のように蒸気を生み出すことで、芝の表面を冷やしていく。真夏の人工芝は最高60度まで上がるとされ、この機能を使えば最大40%カットできるという。

 オランダの首都アムステルダムには人工芝コートが100カ所以上もあるといい、ヒートアイランド現象を抑える効果が期待されている。

 また、ピッチの表面温度が下がれば、選手は快適で、パフォーマンスも向上する。実際、イングランド・プレミアリーグの名門、リバプールの本拠地アンフィールドにも同じシステムが導入されていると聞けば、その効力に納得できる。

■防災対策

 アムステルダムでは、都市の高温化の抑制に加え、別の期待も寄せているという。オランダは国の大部分が海抜ゼロ地帯のため、気候変動で増えるゲリラ豪雨や大雨が社会問題。街に水があふれる状況を防ぐため、駅前の中心地ではアスファルトを石畳に張り替え、その下に人工芝と同じシステムを埋め込み、雨水の逃げ場を造っている。

 さらに、景観づくりにも役立つというから驚きだ。「雨水を灌水(かんすい)。つまり毛細血管のようなシステムで水を吸い上げることで、植物に水をあげることができます」と井口さん。草花の根が水を吸い上げて成長するように、自然界の循環を人工的に再現し、道端の花や木を育てている。

 神戸では、1995年の阪神・淡路大震災の教訓を生かし、災害対応も意識する。当時、被災者は断水の影響で、トイレなど生活用水の確保に困った。そこで同法人は非常時になれば、蓄えた雨水を住民に配る計画を立てている。

 井口さんは「オランダがやっているハード整備をスポーツ施設で可視化し、災害が起きた時には地域の方に水を配ります。街クラブが存在する意義は『みなさんのためにある』と見せていきたい」と力を込める。

■クラブハウス

 人工芝コート以外にも、施設の随所に海外のトレンドや先進技術を取り入れる。

 2階建てクラブハウスは、山林の再生に向け、兵庫県産の木材をふんだんに使って建てる。林業の振興を願う井口さんは「兵庫県の木材の良さや大工の技を目で見て触ってもらいたい」と、ハウス自体を「ショールーム」に位置付ける。

 また、難関とされるドイツサステナブル建築協会(DGNB)の認証取得にも挑む。「持続可能性」をテーマに、生態、経済、社会文化の3つで審査。建物に込める思想など設計の段階から評価するといい、認証はブロンズからプラチナまで4段階ある。

 ちなみに、クラブハウス1階はミーティングなどに使うホールが入り、ガラス窓で囲われている。扉を開ければウッドデッキが広がり、2階はスタッフの専用エリアになる。

■メジャー式照明

 照明にもこだわり、米大リーグ、ニューヨーク・ヤンキースの本拠地で使われるLEDシステムを採用する。電力消費量や温室効果ガスを減らすだけでなく、場内の光も調節できる。内外野を均一に照らせば、選手はボールが見やすく、ファンもしっかりとプレーを視認できる。LED特有のまぶしさも色味を変えることができ、心地よさも届ける優れ物だ。

 照明は仕事や勉強の生産性を左右するとも言われている。神戸では実証実験を予定し、ピッチ上の照度を変え、選手が高いパフォーマンスを示す光量や色味を探るという。

■特殊な倉庫

 シュート練習の壁打ちを兼ねた倉庫も斬新だ。秘密はコンクリートにある。

 従来、砂漠の砂からコンクリートは造れないとされたが、特殊な化学物質を混ぜることで製造できるようになったという。しかも強度は高く、価格も安い。開発したドイツ企業は5種類のブロックを量産し、この組み合わせだけで家屋を建てる。重機は必要なく、手作業でできるという。

 つまり、難解な設計図を必要とせず、字が読めない人でも作業できる。砂漠が広がるアフリカ諸国など貧困国を中心に雇用創出を含め普及が進んでいる。

■SDGs

 一連の試みは時代の流れと重なった。国連は、人類と地球がより長く共存できるよう、SDGs(持続可能な開発目標)を掲げている。「気候変動に具体的な対策を」「陸の豊かさも守ろう」など17の目標があり、2030年までに達成すべきとしている。

 井口さんは言う。「この施設だけで温暖化や都市洪水がなくなるわけではないが、地球が抱える課題を見える化することで、地域の方に気付いてもらえる場所にしたい」。単なるサッカー施設の枠を越え、神戸の田園エリアから新たな価値を広めていく。(有島弘記)

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