
11月、尼崎スポーツの森(兵庫県尼崎市)のアイススケートリンクに勇姿を見せると、観客席から割れんばかりの拍手がわき起こった。3年前に競技選手を引退した浅田真央は、現在はプロフィギュアスケーターとしてリンクで輝いている。純白のドレスで華麗に滑ったかと思うと、傘を片手に軽やかに踊る。アイス・ショーで新たな境地を切り開こうとしており、「フィギュアの魅力を再発見している」と充実した表情を見せた。
ジャンプ、スピン、スパイラル-。躍動感ある技は健在だ。クラシック、タンゴ、ポップスと多彩な音楽に合わせてステップを刻む。まるで「氷上のミュージカル」を見ているようだ。
会場を魅了したのは、10人の団体演技。ドレス姿の女性陣と組んで鮮やかなフオーメーションを展開し、男性とはペアでダンスも踊る。圧巻は、浅田を中心に男性4人が両翼を固めて黒い鳥を表現する場面。不気味な集団が離合集散を繰り返し、リンクを駆け巡った。
選手時代に披露した演目を基本に、振り付けや構成を考えた。「現役時代からペアや複数の仲間と組めたら、もっといろんなことができるなと思っていた」
2010年、カナダのバンクーバー五輪に出場し銀メダルを獲得。ライバルのキム・ヨナ(韓国)と“一騎打ち”は、五輪史上に残る名勝負だった。
一方、アイス・ショーではオーディションなどで選んだメンバーと組む。「選手時代は1人で悩み、苦しい時があった」というが、仲間に支えられて孤独感から解放された。ただ「ミスはみんなでカバーしないといけない。1人でプレーするよりも責任感は重い」
競技選手時代からのファンに感謝の思いを伝える「サンクスツアー」に3年前から取り組み、全国を行脚。「子どもたちが、自分もこんな風に滑りたいと夢を持ってくれるような演技を見せたい」と誓った。
「サンクスツアー大阪公演」は来年1月10、11日、大阪府門真市の「東和薬品RACTABドーム」で。両日とも正午、午後4時半の2回公演。3500円~7500円。キョードーインフォメーションTEL0570・200・888
(津谷治英)
