
兵庫県佐用町出身で初のプロ野球選手となった小深田大翔(こぶかた・ひろと)内野手が、17日に発表されるパ・リーグ新人王の有力候補になっている。東北楽天ゴールデンイーグルスにドラフト1位で入団し、1年目の今季は3割近い打率で好成績を残した。今では、野球ファンだけでなく、わが町の誇りとして地元から熱い視線が注がれる「佐用の星」だ。ゆかりの人たちは、新人王獲得、そしてさらなる活躍を期待して故郷から声援を送り続ける。がんばれ小深田!!。(勝浦美香)
古い町家が立ち並ぶ宿場町・佐用町平福で生まれ育った右投げ左打ちの小深田選手。利神(りかん)小学校(今年3月に閉校)に通いながら、小学生ソフトボールチーム「利神ドジャース」に所属。佐用中時代は硬式野球チーム「佐用スターズ」で汗を流した。高校は強豪・神戸国際大付属高。近畿大、大阪ガスを経て昨年10月のドラフト会議で、楽天から1位指名を受けて入団。守備の要であるショートを守り、打率部門リーグ6位の活躍を見せた。
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そんな小深田選手を幼い頃から知るのが、地元の井上淳一さん(75)。小深田選手が人知れず努力する姿を「野球好きの近所のおっちゃん」として見守ってきた。中学時代の小深田選手は、練習が終わり帰宅した後も、父親の指導を受けながら熱心にバットを振っていた。「おお、ヒロ(小深田選手)。頑張っとるなあ」と声を掛けると、はにかみながらあいさつをしてくれたという。
「高校時代に県の選抜で台湾遠征に行った時は、町役場に頼んで横断幕を掛けてもらったんや」と目を細める井上さん。プロ入り後は、妻の環さん(70)とともに試合に出る小深田選手をハラハラしながら応援した。「自分の孫が打席に立っているような気持ちだった」と環さん。9月にプロ初本塁打を放った時は思わず夫婦で「やってくれたー!」と叫んだ。
「あのはにかみ屋のヒロが、今やスター。1年目でこれだけ活躍してくれたら言うことないわ」と井上さん。「これからは地元でももっと盛り上げていきたい」と意気込む。
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地元の子どもたちも、先輩の活躍に熱視線を送る。
佐用中学校2年の尾崎千翔(ちはや)さん(14)、1年の山根彪雅(ひゅうが)さん(13)、竹田悠大さん(12)は、ともに小深田選手と同じ利神小出身。現在、同中野球部で練習に励む3人は「小深田選手は憧れ」と声をそろえる。
昨年末、同小の閉校記念行事に足を運んだ小深田選手。当時6年生だった竹田さんは「プロ入りが決まっても地元を大事にする所がかっこいい」。山根さんは「顔もイケメンだったな」とにやり。尾崎さんは「1番打者で試合に出続けて、結果も残したのがすごい」と話し、「小深田さんという大きな目標があるから頑張れる」と力を込める。
ちなみに、同中野球部の顧問を務める宮本雅也教諭(25)は小深田選手と同級生。三日月小出身の宮本さんは、小深田選手とは何度も対戦したという。「私はキャッチャーだったので、足の速い小深田から目が離せなかった。来季は盗塁王を目指してほしいですね」と笑う。
昔を知る人たちの熱意が伝わり、日ごとにファンを増やしている小深田選手。17日に新人王を獲得すれば、この盛り上がりも加速すること間違いなしだ。
【もっともっと活躍し、佐用町の名を全国に】
故郷の盛り上がりを小深田大翔選手本人は、どう感じているのか-。電話取材に応じてくれた。
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プロとして初めて迎えた今シーズンを振り返ると、1年目なのにたくさん試合に出してもらえ、よかったという気持ちが大きい。
頑張れた理由の一つは、やはり地元・佐用町からの応援があったから。9月の西武戦で初ホームランを放った時は、地元の友人たちが見に来てくれていたので特にうれしかった。
自分なりにチームに貢献することができたと思う。もっともっと活躍し、野球を頑張っている子どもたちの目標となるような選手でありたい。佐用町や利神地域の名も、全国に広められるように頑張ります。
【小深田はどんな選手? スポーツ紙記者は】
ベテランのスポーツ紙記者の目には、小深田選手はどう映るのか。デイリースポーツの楽天担当、中田康博記者(44)に聞いた。
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新人王候補として有力視される一人。ライバルの西武・平良など、し烈な新人王争いになっている。
小深田の最大の魅力は小柄な体格からは想像できない力強い打撃。シーズン序盤こそプロのスピードに苦戦したが、7月下旬からスタメンに定着すると、外野の間を抜く鋭い打球が見られた。今季の打率は2割8分8厘で、9月以降は3割を超えた。
けがが少ない体の強さもプロに必要な要素を備えている。50メートル5秒9の俊足も武器。今季はチームトップの17盗塁。能力的に来季以降は30盗塁以上を期待できる。オフに課題の守備を磨けば、走攻守に優れた球界を代表するリードオフマンになれる逸材だ。
