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昨年の世界選手権女子走り幅跳び(義足T64)で5メートル37をマークして優勝し、ガッツポーズする中西麻耶=ドバイ(共同)
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昨年の世界選手権女子走り幅跳び(義足T64)で5メートル37をマークして優勝し、ガッツポーズする中西麻耶=ドバイ(共同)

 コロナ禍を機に故郷の大分県から兵庫県伊丹市に移って半年近くになる。女子走り幅跳び(義足T64)のアジア記録保持者で、東京パラリンピックが4度目の挑戦となる中西麻耶(35)=阪急交通社。初の金メダルを目指す拠点は、なんと武庫川河川敷だ。(有島弘記)

 中西のツイッターを見ると、川と並走する姿がたびたび投稿されている。当然、足元はトラックのように舗装された状態ではないが「残った機能を生かした走りになった」。仕事中の事故で右脚の膝下を失ったが、水たまりもある河川敷を駆けることで、残った右膝で微妙にバランスを取っていることを実感。今まで気付かなかった感覚をつかみ、義足の操作性が高まったという。

 転居は、健常者の日本選手権を3度制した荒川大輔コーチに師事するためだった。昨季から大分と大阪を行き来し、昨年11月のドバイ世界選手権の初制覇に直結。新型コロナウイルスの感染拡大で移動が制限されれば成長の環境を失うと考え、緊急事態宣言が出る春前に関西に移り、この夏、伊丹に落ち着いた。

 では、古里を離れるほど頼りにする指導とは。

 「動き一つにしても丁寧に教えてくれる。理解して励めるから、陸上が好きという純粋な気持ちになれる」。跳躍技術の細部にこだわることで進化は止まらず、今年9月の日本選手権では5メートル70のアジア新記録。4位に終わったパラリンピック・リオデジャネイロ大会では銀メダルに相当する。

 この冬は出力を50~60パーセントに抑えて走り込んでいる。「緩いスピードはごまかしが利かない。腰が抜けると進まない」。助走フォームを固めるため、強化に余念がない。

 関西人の気さくさも力になっているという。練習で出会う人に「パラを目指して頑張っています」ぐらいに言いとどめても、次の日には「あんた、ネットで調べたら有名な人やな」と笑顔のツッコミ。自宅近所でも、愛犬を通じた友好の輪が広がる。「地域とのつながりを大切にする考えでやってきた。ここで何年もやりたい」。兵庫の生活にすっかりなじむ。

 武庫川河川敷から続く東京大会への道。「『この人は何かやってくれる』という期待感をつくれていると思う。世界新を出し、金メダルが取れるようにひたむきに努力したい」。兵庫の大地を踏みしめ、高みに羽ばたく。

【なかにし・まや】大分県由布市出身の35歳。21歳の時、仕事中の事故で右脚の膝下を切断した。リハビリの過程で陸上と出合い、2008年のパラリンピック北京大会から3大会連続で出場。前回のリオデジャネイロ大会は走り幅跳びで4位に入賞した。東京大会も代表入りが内定。今夏、古里から伊丹市に移り、手料理のお裾分けなど近隣住民の愛情を受ける。

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