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3月に移住してきた堺さん一家(左の3人)。地域に溶け込み、島暮らしを満喫する=南あわじ市沼島(撮影・小林良多)
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3月に移住してきた堺さん一家(左の3人)。地域に溶け込み、島暮らしを満喫する=南あわじ市沼島(撮影・小林良多)

3月に移住してきた堺さん一家(左の3人)。地域に溶け込み、島暮らしを満喫する=南あわじ市沼島(撮影・小林良多)

3月に移住してきた堺さん一家(左の3人)。地域に溶け込み、島暮らしを満喫する=南あわじ市沼島(撮影・小林良多)

 「これがミントの葉っぱです。さて何種類あるでしょうか」

 8月上旬の昼下がり。沼島(ぬしま)総合センターで小学生5人がクイズの答えを選んでいた。

 「こういうのはめっちゃ多いのが正解やで。だから100種類以上」。6年生の男子が得意げに声を上げた。「はい、その通り」

 南あわじ市の事業「放課後子ども教室」。1学期に引き続き、先生役を務めるのは堺聡さん(38)と直子さん(47)夫妻。沼島に暮らしてまだ半年にもならない。

 空き家を借りた自宅はしゃれた雰囲気。夕食をいただきながら、話を聞いた。

 熊本市出身の聡さんと新潟市出身の直子さんが出会ったのは、冬のフランス・パリ。2000年に結婚して08年に長男虹翔(ななと)君(7)を授かり、東京で暮らしていた。

 転機は2011年3月11日。東日本大震災の原発事故で放射能が気になり大阪へ。さらに淡路島に移り、沼島の存在を知った。

 「ニュージーランドの南島に似てるんですよね」

 海外滞在歴の豊富な2人の大好きな場所だという。真っ青な海。車が走らず、人の声が通り抜けるまち。通うたびに魅力を感じた。

 沼島小学校で開かれていたオープンスクールをのぞいてみた。子どもたちは、校長先生とじゃれ合い、土地に根ざす国生み神話を真剣に学んでいた。

 「この島で子どもを育てたい」。心に決めた。

 聡さんの職業はプログラマー。直子さんは仏語の翻訳。「ネット環境さえ整えば、どこでも仕事ができる」と聡さん。手がけていたホームページの依頼主は、ドバイにすし店を出す東京在住のパキスタン人。なるほど、どこでもできる。

 夏休み中はラジオ体操の世話役を買って出た。盆踊りのやぐら設営を手伝い、法被姿で踊りの輪にも入った。

 「不便? 映画館がないことくらい。こんなに住みやすい所はないですよ」

 テーブルには、漁師にもらった「メジロ」のソテーにキウイのソース。2人の雰囲気と島の空気が混じり合ったアラカルトだ。

 島の観光案内所「〓甚(よしじん)」。芦屋市出身の辻田光俊さん(28)と奈良県出身の妻弥生さん(26)が、訪れた人にレモネードを出す。

 過疎地に移住し、課題解決に取り組む国の「地域おこし協力隊」として、14年2月から沼島に住んでいる。堺さんの背中を押したのも辻田さん夫婦だった。

 大阪でITの仕事をしていた光俊さんは神社巡りが趣味。おのころ神社に魅了され、沼島に住むために協力隊に応募した。

 しかし、任期は再来年まで。2人で年350万円の給料もゼロになる。新たな仕事を見つけなければ、ここには暮らせない。

 まず、小高い丘にある空き家の改修を進めている。島内外の人が滞在できるスペースをつくり、貸し出す計画だ。「夏以外の季節にも人を呼び込みたい」

 来春、父になる光俊さん。島の子どもがまた1人増える。

(岡西篤志)

※文中の「〓」は「吉」の上が「土」

2015/9/20
 

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