「尼崎の魅力は、人。破天荒なくらいに活躍する人が尼崎の一番の魅力、かつ財産です」と語るのは、尼崎市広報課の長田太一さん。一人ひとりの表情にフォーカスした冊子『尼崎市ブランドブック』1万部が、5月13日から無料で配布されている。他の刊行物と並ぶと、まるで高級ブティックのような表紙が異彩を放つ。
◇まるで映画のワンシーン
パラッとめくった4ページ目の、雑多な路地の中に立つ80代の男性。何枚も上着を着こみ、寒いのかと思いきや足元はスリッパだ。風変わりというか個性的というか、「けったいな」姿……だが、かぶったフードの下からのぞく表情には、厳しさと穏やかさとが同居する。そのアンバランスさに、ページをめくる手が止まる。まっすぐこちらを見る目は理知的で、まるで映画のワンシーンのよう。いったいどんな人生を歩んできたかと思わせられる。
その写真に添えられた文には「この街の人は頼まれたら断らない」とある。
男性は2年前にスクールボランティアを依頼され、以来子どもたちの前に立ち続けているという。依頼した人も、どれだけ人を見る目があるのか。
30ページほどの冊子は、馴染みのある尼崎の風景とともに、どのページもメインは人。たしかに「尼崎のキラーコンテンツは人」だ。
◇街のあふれるエネルギーをデザイン
「尼崎の発する活力を見せたかった」という広報課の長田さん。
尼崎の人は地域活動や社会活動にも熱心で、自分の町にこの上ない愛情を持っているが、それをうまく表現できない不器用さがあるという。その愛情の深さをダイレクトに伝える方法として、選んだのが写真だった。
依頼したのは、数々のブランドやセレブの撮影を手がけるベルギー出身のフォトグラファー、ロブ・ワルバース氏だった。選定にあたって市の出した条件は一つ。「尼崎をまったく知らない写真家」だった。先入観がなければ、ありのままの尼崎をとらえてもらえるという狙いだ。
尼崎市は高度経済成長の波に乗って工場が林立したため、公害や治安が悪いといったイメージがまとわりつく。しかし近年、市の努力もあって不動産会社の「穴場だと思う街ランキング」で3年連続1位を獲得するなど、イメージは向上しつつある。
「でも本当に負のイメージを払拭するには、まだ積極的な努力が必要です。ただそうはいっても、地方の自治体が写真メインの冊子を発行のは、やはり冒険でした」
そんな試みの中で発刊された『尼崎市ブランドブック』は今月13日から市内で配布開始。反応は上々だ。「こんな人がいたんやと、市民も気づかなかった新たな尼崎の魅力の再発見につながっているようです」と長田さんもホッとした表情を浮かべる。
ブランドブックに登場する人たちは、すべて市内在住や市内で活躍するなど尼崎にゆかりのある人たち。それぞれが大切に思う場所で撮影されたという。そのリラックスした表情に、つい見ているこちらも「ここはどこだろう」「こんなかっこいい場所に行ってみたい」と思わせられる。長田さんは、それも狙いという。
「この本だけの力で行ってみたい、住んでみたい、住んで良かった……まあそこまでの贅沢は言えませんが、一つのきっかけにして尼崎に興味を持って、いずれは住んでいただきたい。望みは高く、です」と笑う。
『尼崎市ブランドブック』は5月13日プレスリリースと同時に市役所をはじめ、生涯学習プラザ等で配布。緊急事態宣言が解除されたのち市内の駅や大規模施設でも配布予定。
(まいどなニュース特約・國松 珠実)
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