世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス。マレーシアでは人口100万人当たりの新規の感染者数がインドを上回り、6月1日から14日まで全土でロックダウン(都市封鎖)措置が取られる、と報道がありました。日本から飛行機で約7時間、距離にして約5000キロ。海の向こうの話…のはずが、4月に夫が突然マレーシア赴任を言い渡された私たち家族にとっては抜き差しならない事態になっています。
■1500社を超える日系企業、異動凍結解除の矢先に…
マレーシアは物価の安さや治安の良さなどから移住地としても人気が高く、外務省によると、2019年10月1日現在で2万6701人の在留邦人が暮らし、電機メーカーや自動車メーカーなど1500社を超える日系企業が進出しています。コロナの世界的流行で多くの企業が海外への人事異動を凍結していましたが、これ以上留め置くことはできないと再開し始めた企業も少なくありません。
実は夫の会社もそうでした。4月上旬、突然の辞令で7月からマレーシアに赴任することに。前例からして赴任期間は3~5年。夫はかねてより海外勤務を強く希望していました。私はフルタイムで仕事をしていましたが、幼い子どもたち2人にとって異国での生活は必ず人生にプラスになる、とも考えていました。この時点ではマレーシアの感染状況はまだ落ち着いていましたし、悩みに悩んだ末、我が家が何よりも大切にしてきた「家族4人でいること」を優先し、家族全員でマレーシアに渡ることに決めました。
私は会社に退職届を出し、ゴールデンウイーク後には子どもたちが通う保育園に6月末で退園する意向を伝えました。狂犬病や腸チフスなどの予防接種を1日5本も打ち(任意接種のため1人10万円超!)、人間ドックも済ませ、ビザやパスポート用の写真を撮るなど、感染状況を気にかけながらも、やれることは粛々とこなしてきました。
■14日間のホテル隔離…外出は一切禁止、食事は現地の弁当のみ
しかし、変異株の流行で一気に状況が変わり始めました。4月下旬には、日本を含む変異株の流行地域を対象に、マレーシア入国後の隔離期間が従来の10日間(PCR検査済みなら7日間)から14日間に延長されました。たった1週間延びただけですが、我が家には死活問題。指定されたホテルで缶詰生活を送るのですが、食事は毎食ドアノブにかけられる弁当のみ。部屋のカードキーで管理され、一切外出は認められません。夫と一緒といっても、遊びたい盛りの未就学児2人と乗り切れるのか…と不安は募るばかり。
何か室内で体を動かせる遊び道具を…と考えたものの、嵩張る運動器具を持ち込む訳にもいかず、行き着いたのはボールと家族で楽しめるボードゲーム。ゲーム機器はまだ未就学児には早いし、動画漬けになるのも悩ましい。かといって夫は同じ室内で仕事もしなければならず、映画が見放題のサブスクサービスを幾つかダウンロードすることに。さらには弁当も現地の食事が提供されるので、子どもたちが食べられないケースを考えて火気を使わない電気調理器の購入も検討しました。
しかし、状況はどんどん悪化していきます。5月12日からは外食禁止等の措置が取られましたが、感染拡大に歯止めがかからず、人口は日本の約4分の1の約3200万人ながら5月28日現在で1日の感染者数は8290人と、日本の約3倍という爆発的な感染拡大が続き、ロックダウンを余儀なくされる事態に。外務省領事局によると、生活に最低限必要な業種を除く経済活動が制限され、食料購入のための外出は1世帯2人までで居住地から半径10キロ以内など、細々と規制されています。教育機関は閉鎖され、子どもを通わせようとしていたインターナショナルスクールもずいぶん前からオンライン授業に切り替わり、通常に戻る見通しはつかない状況だそうです。
■「命を大切に」出した結論も…尽きぬ不安
夫の会社の駐在員も、家族だけを日本に帰国させるという話が出てきているといい、刻一刻と状況が変化する中、我が家はどうするか?連日夫婦で話し合いを重ねた結果、出た結論は、当たり前ではありますが「家族4人でいること」より「命を大切にすること」を優先すること。夫は先にマレーシアに渡りますが、私たちは出国を秋以降に遅らせることにしました。
何より優先したのが、子どものことでした。マレーシアの学校でオンライン授業が続くのであれば、英語が全く話せない我が子たちは友達もできず、何の勉強をしているのかさえ理解できないでしょう。必要最低限の英語すら話せない私1人で子どもたちのオンライン授業をフォローできる自信はありません。基本、外出は一切できず、マンション内の広場やプールさえ使用できません。想像しただけでストレスは計り知れません。
幸い、子どもたちの通う保育園は幼保一体型の認定こども園のため、園の配慮で保育園児から幼稚園児に切り替えるだけで、転園せずに今まで通り通い続けることができそうです。しかし、これも全て今日時点での判断で、正しいかどうかさえ分かりません。もし、単身の夫が現地で感染してしまったらどうするのか?私と子どもたちがマレーシアに行ける日は来るのか?コロナ禍で実家や義実家のヘルプも見込めない中、日本で完全ワンオペ育児はやっていけるのか…?
と、ここまで書いていたら、6月のビザを発給されない可能性まで浮上してきました。となると夫のマレーシア入りも延びかねず…。コロナという先が見えない要因に翻弄され続け、決断を強いられ続ける毎日です。
(まいどなニュース特約・斉藤 絵美)
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