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豊田真由子
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豊田真由子

新型コロナワクチンの接種については、医療従事者、高齢者に続き、職域接種や64歳以下の方への接種が始まっています。現在、ワクチン接種会場の運営の監修をさせていただく中で、ご質問の多かった事項を中心に、考えてみたいと思います。

高齢者からは「重症化がこわいし、周囲に負担をかけたくないから、早く打ててよかった」という一方で、若い方々から「ワクチン接種の長期的な影響が分からなくて不安。ちょっと様子を見たい」、保護者から「子どもに打たせるのは不安」といった声も聞こえます。

ワクチンを接種するかどうかは、最終的には、それぞれの方のご判断です。ただ、様々な情報が世に溢れる中で、少なくとも、その判断の前提として、「その時点における最新かつ(科学的に)正しい情報」が、お一人おひとりにきちんと届くようにすることが、大切なのだろうと思います。前編と後編に分けて解説します。今回は前編。

■Q)接種当日に気を付けることは?

まず、ワクチンを接種する方向けに、少々実務的なことからお話ししたいと思います。 

・接種から数日間は、できるだけ重要な予定を入れない。

特に2回目の接種後ですが、後述するように、発熱や全身倦怠感などの副反応が出ることがありますので、それを踏まえて、接種と仕事や生活のスケジュールを組んでいただくことが大切かと思います。

・2回目の接種を、指定された日程できちんと受ける。

2回接種のワクチンは、1回目だけでは効果が十分ではなく、2回目を適切に接種することで、有効性が高まります。1回目と2回目の接種間隔は、ファイザーが3週間、モデルナとアストラゼネカは4週間とされています。

なお、仕事の都合などで予定通り打てなかった場合はどうすればよいか、というご質問を受けます。規定された接種間隔を超えた場合の効果は、十分には検証されていませんが、WHOや欧米の一部の国では、規定の接種期間を超えた場合でも、1回目から6週間後までに2回目を接種することを目安として示しています。

・半袖を着て行く

新型コロナワクチンの筋肉注射は、肩峰(肩の出っ張った骨)から、指3本分ほど下のところに垂直に注射します。したがって、長袖のシャツ等ですと、袖をまくってもその部位が出せず、結局長袖のシャツを脱いで、下着姿で接種することになっている方をお見かけします。着脱に時間がかかるといったこともありますので、当日は、半袖を着て行かれるのがよいのではないかと思います(温度調節のために、上に羽織るものもお持ちいただくとよいかと思います)。

・接種券を持参する。

ワクチン接種の予約は接種券の番号だけでできても、実際の接種会場では、接種券が無いと通常は接種できないことになっています。職域接種だけは、(自治体から接種券が送られてきていないこともあるので)、接種券がなくても接種可能(受付で身分証明書で確認)とされていますが、いずれにしても、最終的には、接種した方は、運営者に接種券を提出して、行政への登録や各種申請などをしてもらわないといけませんので、お住まいの自治体から接種券が送付されてきたら、きちんと保管し、接種会場に持参(または事後に提出)してください。

・予診票を記入していく。

すべての方が、当日の体調などについて、予診票を記入し、予診を受けた上での接種となります。

心臓・腎臓・肝臓・血液疾患などの基礎疾患のある方や、過去に予防接種で発熱や発疹などのアレルギーが疑われる症状が出た方などは、ワクチンを接種するに当たって注意が必要ですので、予診票に記載をしていただいた上で、医師の予診を受け、接種となります。

接種後は、すべての方が、経過観察のため、少なくとも15分(アレルギー等を有する人は30分)、会場で待機することになります。

・その他

接種部位を、揉んだり、こすったりしない。

接種当日は、激しい運動や飲酒は控える。

入浴はOK

ワクチンを接種して、免疫がつくまでに1~2週間程度かかることに留意。

■Q)副反応が心配なのですが・・

ワクチンの副反応について大切なことは、重篤なものと、そうでないものとを分けて考えること、そして、現在までに蓄積されたデータから分かっていることを、あらかじめ知った上で、判断をする、あるいは、心構えをしていただくことではないかと思います。

なににつけ、「知らないもの」はこわい、まずは「知っておく」ことが、一定の安心感と必要な対応とを可能にするのではないかと思います。

現在、全国の自治体で接種されているファイザー製と、自衛隊の大規模接種会場や職域接種で使われているモデルナ製の新型コロナワクチンについて、副反応の症状と発言割合は以下のようになっています。こうした症状の大部分は、接種後数日以内に回復しています。

こうした副反応については、新型コロナワクチンは、これまでの通常のワクチンと比べると、発生頻度は高い傾向にあると言われています。

(1)発熱や接種部位の痛みなど

下記は、日本で医療従事者2万人を対象に行われた新型コロナワクチンの先行接種における副反応の状況です。ファイザーのワクチンで、どのような副反応が生じたかを、接種者の年代別や接種後日数別に調査しています。

接種1回目より2回目、そして、若い方は刺激への反応が強いといったことから、発生率が高くなっています。ほとんどの副反応は数日でおさまっています。

例えば、37.5度以上の発熱は、接種1回目は数%の発生率ですが、接種2回目は、20、30代の女性では5割、男性では4割に発生しています。65歳以上の発生率が1割であったことに比べると、発生率は高くなっています。

発生日を見ると、接種日の翌日(2日目)の発生が多くなっています。

男性より女性の発生率が高くなっています。これについては諸説ありますが、女性の方が免疫反応が強い(※膠原病、関節リウマチ等の自己免疫疾患も女性に多い)ことや、ワクチンに含まれるPEG(ポリエチレングリコール)の影響などが、指摘されています。

(2)アナフィラキシーや心筋炎など

米国CDC(米国疾病管理予防センター)によると、ワクチン(や食物など)へのアレルギー反応であるアナフィラキシー(じんましんなどの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状)の発生率は、接種者100万人当たりおよそ2-5人、日本の厚生労働省によると、ファイザーのワクチンについて、約1300万回の接種のうち169件で、およそ7万7300回に1件の割合だったということです。

また、6月23日、米国CDCの予防接種諮問委員会(ACIP)は、ファイザーやモデルナのワクチンについて、まれに若年層に心筋炎・心膜炎の発症が見られるとのデータを公表し、引き続き検証を続けることとしました。CDCや米厚生省と医療の専門団体は、「こうした症状は極めてまれで、若い世代ではほとんどが軽い症状にとどまっている。ワクチンは自分と周囲の人間を守り、その恩恵はリスクを上回る」とする声明を共同で出し、引き続き若い世代も接種するよう呼びかけています。日本の厚生労働省の審議会でも、日本循環器学会が同様の見解を示しています。

日本に限らずですが、当局は、国民の間に、新たなワクチンへの疑問や懸念があることを真摯に受けとめ、事例を幅広く収集し、接種との因果関係などを評価し、適切に情報提供することで、透明性と信頼を確保していくことが、国としてワクチン接種を進めていく上で、とても重要だと思います。

■Q)市販の解熱薬は飲んでいいの?

発熱や接種部位の痛み等が生じた場合は、市販の解熱鎮痛薬で対応していただいてよいことになっています。

6月25日、厚生労働省は、一部商品が薬局で品薄になっている状況を受け、妊婦や子どもなどにも使えるアセトアミノフェンのほか、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどを成分とする市販の解熱鎮痛薬も使用できるとしました。

なお、発熱などの症状が出る前に、予防として解熱鎮痛薬をあらかじめ飲んでおくことは、WHOや厚生労働省でも、推奨されていません。

米CDCによれば、接種部位が痛む場合には、清潔な冷たい濡れた布で冷やす・腕を動かす、発熱した場合には、水分補給をする・ゆったりした服装をする、などが、症状を和らげる方法として挙げられています。

妊娠中や病気治療中の方や、激しい痛みや高熱などの症状が重い、または長く続く場合には、医療機関にご相談いただきたいと思います。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

2021/7/2
 

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