連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

話題

  • 印刷
歌舞伎界のプリンス、声優初挑戦(2020年撮影:石井隼人)
拡大
歌舞伎界のプリンス、声優初挑戦(2020年撮影:石井隼人)

「父からは『良かったよ』と言われました。僕としては恥ずかしい半分、嬉しい半分。一応『はあ…』とは返事をしましたが」。父・松本幸四郎の誉め言葉に高校生らしい反応で照れるのは、“歌舞伎界のプリンス”こと八代目・市川染五郎(16)だ。

アニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』(7月22日公開)で声優に初挑戦。自己採点を聞くと「100点満点中20点。どんなに一所懸命にやっても、後々考えると反省点ばかりなんです」とストイック。その生真面目さは父親譲りか。

人とのコミュニケーションが苦手な俳句少年チェリー(染五郎)と、コンプレックスを隠すマスク少女スマイル(杉咲花)。そんな二人の言葉と音楽を通した出会いと交流を、カラフルな筆致で綴るアニメーション。

「歌舞伎と普通のお芝居では、声の出し方から違います。歌舞伎はどちらかというと、歌に近いセリフ回し。舞台は公演ごとに修正したりして芝居を変えることができるけれど、映像は一度撮ったらそれが固定されてずっと残る。しかも声優は初挑戦。ついていくことができるのだろうか?という不安ばかりでした」とプレッシャーが大きかった。

慣れない声だけのパフォーマンス。「一番難しかったのは、息遣いのお芝居。鏡を見て髪の毛をいじる動作にも息遣いが必要なんです。今までほぼ歌舞伎の舞台しか経験がなかったので、声や息だけでキャラクターを表現するのは大変な作業でした」と苦戦を振り返る。

抜擢の理由はその声にあり。「イシグロキョウヘイ監督が僕の舞台を見てくださったときに『チェリーの声を見つけた!』と思ってくださったそうです。人見知りという性格的にもチェリーは僕に似ている。共通点を自然に出そうと思ったので、役作りはあえてしていません。半分は素の自分で挑んだようなところがあります」と親近感あるキャラクターに救われた。

深く役作りせずに臨んだのも初めて。「歌舞伎だと役作りは結構する方です。昔の資料を調べたり、ほかの役者さんがやったときの写真や映像をチェックしたり。でも今回の役柄は僕にそっくり。ならば自分との共通点や共感点が出ないと僕がやる意味がないと思ったので、素の自分を出すように心掛けました」とこだわりを持って演じることができた。

個別で収録したそれぞれの声がミックスされて、一つの作品になるというアニメーションならではの醍醐味にも感動。「まるでパズルが完成したかのような感覚で、一気に作品の全体像が見えた。それが凄く楽しくて。声優の皆さんと一緒に収録させていただいたパートでは言葉にできないような感情が心に渦巻きました」といまだかつてない刺激を経験した。

自己採点が「20点」と辛口なのは、思春期ならではの感情も関係しているのかも。「改めて自分の声を聞くと…気持ちワルっ!と思う」と照れ笑い。プリンスの初々しさが詰まった一作だ。

(まいどなニュース特約・石井 隼人)

2021/7/19
 

天気(9月8日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 40%

  • 33℃
  • ---℃
  • 50%

  • 34℃
  • ---℃
  • 20%

  • 34℃
  • ---℃
  • 40%

お知らせ