一途な思いが実った。大阪府と大阪市は28日、夢洲(此花区)への誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の運営事業者として、早くから”大阪オンリー”を掲げていた米カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同事業体を選定したと発表した。初期投資額は超破格の約1兆800億円。年間の売上高は約5400億円を見込む。府・市は同グループとともに整備計画をまとめ、来年4月までに国に申請。2020年代後半の開業を目指す。
 紆余曲折を経た大阪IRの事業者は落ち着くところに落ち着いた。当初はラスベガスやマカオなど複数の大手事業者が名乗りを挙げ、2025年の大阪・関西万博前に部分開業するプランが出るなど前掛かりだったが、コロナ禍などで停滞、沈静化。そんな中、「大阪オンリー」を貫いたMGMリゾーツ・インターナショナルはパートナーのオリックスとともに唯一公募に参加し、この日、晴れて選ばれた。
 MGMが大阪に本格的にアプローチしたのが2018年夏の大阪・天神祭。あのブルーマンを本場ラスベガスから呼び、度肝を抜いた。その後も数々のIRイベントに出展。地域との交流を図る一方で、グランフロント大阪ではIRを啓蒙する企画も実施し、2019年秋にはオリックスと手を組んだ。この一連の流れを知る筆者にとっても感慨深いものがあった。
 この日、記者会見した吉村洋文知事は「負の遺産とも言われた夢洲に世界水準の成長型IRを誘致し、実現する。国際的な都市間競争に打ち勝ち、大阪はもちろん、関西や日本全体の観光、経済の底上げの拠点にしたい」と意気込んだ。
 なるほど「世界水準」と豪語するだけ合って、スケールは破格だ。事業提案によると、施設の総延べ床面積は約77万平方メートル。なんと、初期投資だけで1兆800億円という。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のそれが2000億前後と言われており、その5倍の規模と言えば分かりやすいか。
 吉村知事は、ビルの上に巨大な船を乗せたようなホテルとして知られ、大阪IRが競合相手とするるシンガポールの「マリーナベイ・サンズ」を引き合いに出し「1兆円の初期投資というのはマリーナベイ・サンズとセントーサ島(リゾートワールド・セントーサ)にある施設をふたつ足したぐらい。もちろん、つくって終わりじゃない」と話す。
 事業のビジョンは新鮮な驚きや感動を表す「大阪・関西に”WOW”Nextを。」だ。コンセプトは”結びの水都”とし「水都大阪」の伝統や文化を継承。その上で様々な産業を結び、アジアの中核として開かれた国際都市を目指す。
 これまで分散していた国際会議場や展示施設といったMICE施設を1カ所に集めるオールインワンを実現。国際会議場の延べ床面積はグランキューブ大阪の2倍となる3・7万平方メートルで、6000人を収容できる。コンサート会場にもなる展示施設は展示面積2万平方メートルから将来的には6万、10万平方メートルへと拡大していくという。
 ホテルは開業時にリーガロイヤルホテル大阪の2・5倍となる2500室規模でVIP用など3棟を整備。さらに、関西ツーリズムセンターや演劇施設、ジャパンフードとしての飲食や物販などにも力を入れる。
 それにより、IR関連だけで1万5000人の雇用を生む。アフターコロナを前提に年間来場者は約2050万人(国内約1400万人、国外約650万人)を想定。年間売り上げは約5400億円を見込み、府と市は納付金と入場料で年間約1100億円を得られるとしている。
 カジノエリアは3%以内を堅持し、日本人は入場に際し、6000円を払う。厳格なルールを設定し、ギャンブル依存症対策にも真剣に取り組む。吉村知事は「すでに日本には公営ギャンブルがあり、街中にあるパチンコも僕自身はギャンブルと思っている。IRができることにより、正面から取り組むいい機会になるのではないか。MGMには豊富な知見があり、府と市も責任あるギャンブリングに積極的に関わっていく」と話した。
 課題としては3点を挙げた。コロナ禍がどのように収束するのか。また、国が決めるIR関連の税制度も大きなポイントのひとつ。知事は「国際標準に合わせてほしい。高いと競争に勝てない」と国をけん制し、さらに、人工島・夢洲の土壌汚染や液状化への対策にも目を向けた。
 今後は大阪府・市とMGM・オリックスコンソーシアムが一枚岩となって、年末から年明け1月にかけて区画整備計画を磨き上げ、府・市議会の議決を経た上で22年4月までに国に申請する。知事は「自信を持って提案し、国内3カ所に選ばれるようにしたい」と力を込めた。
 IRを巡っては、有力候補だった横浜市の山中竹春市長が9月10日に誘致撤回を宣言したため、現在誘致に手を挙げているのは大阪府・市と和歌山県、長崎県の3地域。国はIR整備を国内で最大3カ所としており、提案内容を吟味し、持続可能かを判断し、22年にも決定する方針だ。大阪IR推進局は「他地域と切磋琢磨し、選ばれるようにしたい」と話した。
 大阪IRが実現するのは間違いないだろう。開業は早ければ2028年。首を長くして待つ一方で、ギャンブル依存症対策などの課題にも目を向けていく必要がありそうだ。
(まいどなニュース特約・山本 智行)
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