2019年8月に茨城県八千代町の住宅で、住人の70代夫婦を殺傷したとして、殺人などの罪に問われたベトナム国籍の農業実習生グエン・ディン・ハイ被告(23)の裁判員裁判で、水戸地裁は10日、懲役27年(求刑懲役30年)の判決を言い渡したが、弁護側は無罪を主張し、この判決を不服として即日控訴した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は当サイトの取材に対し、国際捜査課で外国人犯罪と向き合った経験から、改めて事件の焦点を分析した。
起訴状などによると、ハイ被告は19年8月24日、八千代町の住宅で大里功さん(当時76)の胸などを柳刃包丁で複数回突き刺して殺害し、妻裕子さん(76)の首や腹などを刺して重傷を負わせたとしている。弁護側は、ハイ被告が室内に立ち入ったのは別の人物が犯行に及んだ後であるとして無罪を主張したが、判決では大里さん宅からは血の付いたハイ被告の足跡(足紋)だけが採取されたとして退けた。
小川氏は「同被告の足裏の指紋、すなわち『足紋(そくもん)』には血痕がついていた。足紋は『万人不同、終生不変』と言われるように、一生変わらない。現場に素足で入ったと思われる被告の足紋が採取され、本人の足紋であり血痕が付着していたにもかかわらず、被告が現場で何が起きていたかを知らないわけがない」と指摘した。
また、同氏は「被告は大里さん宅の野菜を盗みに行って、その際に包丁が必要だったとしているが、実際に野菜は盗まれていたのか」と、供述との矛盾点を洗い出す必要性を補足した。
さらに、小川氏は「私は国際捜査課にいてベトナム人の事件の捜査も担当したが、ベトナム人の単独の犯行は私の知る限りなく、必ず共犯者がいるという習性があった。今回の事件でも、他に“共犯者”がいるとしてもおかしくないと私は感じている」と、同被告が単独犯かどうかも改めて検証が必要だと付け加えた。
今回の裁判で、中島経太裁判長は「(被害者を)執拗かつ多数回刺しており、強固な殺意がうかがえる」と指摘。小川氏も「今回の罪名には『強盗』という文言がありません。つまり、物盗りではなく、就寝中の高齢者を包丁で何度も刺したという行動から、実際の動機は分からなかったとしても、そこに強い殺意がうかがえる」と見解を示した。
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