納得がいかない。
私は神戸新聞の3年生記者。兵庫県三田市を担当して2年目になった現在、紙面を編集するデスク(上司)との間に、写真をめぐる攻防戦が起きている。撮ってきた写真がことごとく、出しても紙面で使われないのだ。デスクは「保留」とはぐらかすが、要するに「ボツ」になっているのである!
大学時代は写真サークルに所属し、各地の風景を撮り歩いてきた。技術はともかく、写真に対する思い入れは人一倍あるつもりだ。
ではなぜ、何がいけなかったのか。2021年ももうすぐ終わり。一度冷静になり、これまで出してきた写真を振り返りながら、探ってみようと思う。
【柳のかかし】
ことの発端はこの1枚。朝刊の三田版にある「三田文芸」用に出稿したもので、柳の下にたたずむ浴衣姿のかかしを収めた。
文芸は読者投稿の俳句や川柳を紹介するコーナーで、記者が撮った写真とキャプションをあしらう。筆者はここを小じゃれた大喜利の場だと捉え、ひとひねりした作品を添えようとしている。
「文芸用の写真、なんかない?」。年の瀬、デスクに尋ねられたとき、送ったまま1カ月以上放置されているこのかかしを思い出した。
「撮影角度がよくないんやなぁ。ちょっと浮いてるから、首吊ってるみたいにも見えるやん。新聞はおじいちゃんもおばあちゃんも朝から読んでくれるんやから、あんまりホラーな写真は載せにくいわ」。デスクの言い分はこうだった。
そこまでだろうか。確かに「うらめしや~」をイメージしたが、「ゲゲゲの鬼太郎」の猫娘にも通じる可愛いものだと思うのだが…。
【かかし2人バージョン】
それならばと追加のもう1枚。哀愁漂う2体のかかし。まるで夫婦デュオ。風の吹く渓谷に演歌のイントロが流れ出しそうだ。
これもなかなかお気に入り。しかし、前向きな回答は得られなかった。
【カエル】
…こういうのは通った。
「まぁ、ええんちゃう?見ようによってはカエルに見えんこともないし。知らんけど」
本社からタイトルと写真が違うものではないかという問い合わせはあったが、よく見たら分かるらしい。
【空の水族館】
空を流れる雲を魚に見立てた水族館。ヤドカリやイルカ、エビフライ(?)が泳いでいるように見えた。デスクからの入念な確認はあったが、無事掲載。
ただ、もう少し特徴的な雲をアップで撮ったらよかったのかも…という反省はある。
【エミュー】
移動動物園の取材で撮ったエミュー。「呼んだ?」のタイトルで出したが、後ろの子どもたちの帽子に目が行って分かりづらい、と却下。
背景をぼかすなどして動物の輪郭を際立たせるべきだったか。
【えのき】
「えのきやね」「えのきですね」
後ろから画面をのぞき込むデスクと先輩が口をそろえるので、すごすごとパソコンを閉じた。
打ち上げ花火の取材中、カメラの設定を調整する前に花火が上がり始めて動揺した。慌ててシャッターを切ると、今の季節にぴったり、高速で鍋に落下するえのき(ブレた光の跡)を捉えていた。
「それはそれで前衛的では」と出してみたが、却下された。まあさすがに、これはあかんわな。
【ちゃんとしてるやつ】
お気付きだろうか。鼻息荒くデスクに意見しようとしていたはずが、途中から自分の反省会になっていたことを。
思い返せば入社1年目の研修。よくない写真の例として筆者の写真が同期の前にさらされた。
先輩に助言をもらったり、本を読んで様々な撮り方を試したりして、当時よりは成長しているはずだが、「来年からはツッコミなしで使ってもらえる写真を出したい」と、この記事を書きながら思った。
あえて「明日から」にしなかった。最後に言わせてほしい。
デスク、かかしの写真は納得できる回答が得られていません。いつ使ってくれますか?
(まいどなニュース/神戸新聞・喜田 美咲)
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