私が住む千葉県の総武線沿線では、25年前まで直流近郊型電車のスカ色113系を目にしない日はありませんでした。スカ色とは「横須賀線色」の略で、青松と白砂を表現した青と白の塗装が特徴です。横須賀線を走っていた70系のころからの流れで、私にとって郷愁を誘う色合いといえるでしょう。私が生まれる8年前の、1963年から運用が始まりました。
このスカ色113系は総武快速線はもちろんのこと、千葉駅から先の房総各線の快速・普通列車はすべてこちらでした。1000番台だったと記憶しています。
ここで疑問なのが、「横須賀線色」であるのに総武線を走っている理由です。投入当初から、スカ色なのです。房総半島の青い海と白い砂浜をイメージしたのでしょうか。
それとも、総武快速線と横須賀線の直通運転を想定していたのでしょうか。もしそうであるなら、直通運転になったのは1980年ですから、113系が投入されて20年ほど経過しています。少し時間が経ちすぎているような気が…。真相をご存じの方がおられましたら、教えてください。
◇ ◇
さて、今ではレトロ列車になった113系、1963年に東海道線80系および153系の置き換え用に登場した111系の出力増強版として活躍し始めました。
この113系の画期的な点は、3ドアになったことです。113系以前の80系や153系は、片開き2ドアだったため、通勤時間帯では乗降に時間がかかっていました。現在2ドアの車両は特急型や新幹線でしか見られませんが、1960年まではそれが当たり前だったのです。
意外に思うかもしれませんが、今で言う近郊型の両開き3ドアセミクロスシート車は国鉄401系の方が先でした。1961年のことです。
113系はスカ色だけではありません。グリーンとオレンジの湘南色も、私と同年代の方にはお馴染みではないでしょうか。この塗色は「静岡のお茶とみかんをイメージしたのでは?」という説がありましたが、それは後付とか。本当は、鉄道技師として名高い島秀雄氏が、アメリカのグレートノーザン鉄道の塗色からヒントを得たとのこと。
そういえば、1974年から1977年までの川崎時代の大洋ホエールズも、この湘南色のユニフォームでした。静岡出身の山下大輔氏の入団に合わせたのだそうです。今、考えてみれば一新人選手の為にユニフォームを変えるというのも凄い話ですね。私の大洋ホエールズのイメージはこの色です。
113系はJR東日本地域だけを走っていたわけではありません。阪和線新快速は白地に水色帯で関西本線快速は白地に赤帯でした。子供のころ、乗ってみたくてたまらなかった電車です。鉄道写真本や鉄道入門書でしか見られない、千葉県在住の私にとって幻の電車だったのです。中身は変わらないと分かっていても、憧れでした。
113系と似ているものの、大きく違うのが115系です。同時期に大量生産されていますが、113系が温暖地・平坦用であることに対し、115系は寒冷地・勾配仕様なのです。115系の方が過酷な仕事をしてるんですね。同じ湘南色でも前面の塗り分けがVの字の113系に対してUの字の115系。こんな細かい違いは、鉄道ファンにしか分からないでしょう。
私が生まれてからずっと傍にいてくれた113系は、残念なことに今ではJR西日本でしか現存していません。あるだけでなく、ちゃんと動いています。さすが国鉄型電車の動く博物館と言われるJR西日本だけの事はあります。湖西線・草津線・福知山地区、そして岡山地区を今も元気に走っています。湖西線と草津線は全面グリーンで、岡山地区は全面イエロー。このあたりもJR西日本らしいですね。
草津線では忍者の里にちなんで、「忍トレイン」というラッピング列車が今年の6月まで走っていました。忍(しのび)らしくいつ運行されるか分からない神出鬼没の列車であるものの、私は運良く京都駅で撮る事が出来ました。しかも湖西線の113系に乗ってる時に。
このように、JR西日本ではもうしばらく113系が見られそうです。しかし、コロナ禍でなかなかJR西日本エリアに行かれない方も多いと思います。コロナの状況が早く良くなることを祈り、再び113系と気軽に触れ合える日が訪れるのを待っています。
淘汰される前に、また写真を撮りたいものです。
◆マグナム小林(まぐなむ・こばやし) 1971年千葉県千葉市に誕生。1994年8月、立川談志に入門、2000年8月上納金未納のため破門。以降、バイオリンエンターテイナーとして活動を開始。擬音ネタや東京節にあわせたなぞかけ、バイオリンとタップダンスをあわせた芸で多くの聴衆を魅了する。落語芸術協会と東京演芸協会に所属。千葉市立千葉高校時代には野球部のキャプテンを務めた。プロレスや競馬にも造詣が深い。
あわせて読みたい
話題
-
「納車から廃車まで一瞬」クロネコ便の段ボール車を乗りつぶした猫さん 大胆すぎるアクションに「何回見ても笑える」「壊れ方そっち?」
-
関西のなつかし銘菓「ぽんせん」 火事にコロナに機械故障…経営危機乗り越え、1年2か月ぶりに製造再開!
-
「よく購入する・好きなファッションブランド」ランキング 全世代で1位に選ばれたのは…
-
会社員の約7割「接待や会食での飲酒を断れない」→内科医500人に聞いた、実践している「ケア」とは
-
お腹がつながって生まれた双子姉妹 生後2カ月で分離手術 16年後の同じ日に父を亡くし…“命のバトン”胸にモデルの夢へ
-
馬にシマシマのカバーをかけて虫よけに?イグノーベル賞を受賞した防虫方法、乗馬界では常識だった?
-
高校時代にホームレス生活を経験した元看護師 受けた恩を次世代につなぐ「こども万博」が大盛況 子どもたちの夢を大人が全力で応援
-
一応同僚だけど…知らない人にまで払うの? 結婚・出産祝い金の職場徴収に違和感 このモヤモヤ、どうやったら消えますか?【心理カウンセラーが解説】
-
17歳から30歳へ、“垢抜け進化”13年の記録に反響 「若作りせず清潔感を」…重ねた年齢を意識、無理なく育てた魅力が話題
-
ランチにも呼ばれずひとりぼっち…18歳女子社員 “信頼していた先輩”に、セクハラされて気づいた真実【漫画】