昔ながらの商店街をぶらぶら歩いていると、絵本や小説、漫画などいろいろな古本の入った木箱が至るところに置かれていることに気づいた。
「どなたでもご自由にお読みください」
「捨てられない本や、読み終わって誰かに読んでほしい本はありませんか?
そんな本があったらこの箱にそっと入れてください」
木箱にはそうメッセージが掲げられており、「貸出料金 無料(ただです)」「貸出期間無期限」との文字も。気になって調べてみたところ、この商店街による「街中(まちなか)図書館」という14年も前から続く取り組みで、地域の住民でなくても、本当に誰でも自由に持ち帰って構わないらしい。
ここは、北アルプスを望む長野県大町市の下仲町商店街。JR大糸線の信濃大町駅からすぐの場所にある目抜き通りで、飲食や家具、衣料品など、歴史を感じさせる商店が軒を連ねている。
街中図書館のそもそもの発端は、地元で活性化などに関わる堀堅一さんが市のごみ処理場を訪れた際、貴重な郷土史などが束になって捨てられているのを見たことだという。
「『燃やされるのはもったいないので、いただけませんか』と職員にお願いしたら、『規則でそれはできません』と言われたんです。こういう本が人知れず捨てられているのは良くないのではと思い、読まなくなった本を別の人につなげる仕組みをつくろうと『街中図書館』を始めました」(堀さん)
地元の書店には、事前に「商売の邪魔になったら申し訳ない」と頭を下げた。すると店主は逆に、「活字離れと言われる中、どういう形であれ本に親しんでくれる人が増えることは大歓迎ですよ」と快く受け入れてくれたという。
街中図書館は2008年、趣旨に賛同した同商店街の振興組合が主体となってスタート。参加する各商店の前に段ボール箱を置き、住民から寄贈された古本を十数冊ずつ中に並べた。「読み終えたら箱に返せばいいし、何なら自分のものにしてくれてもいい。提供に関しても、『不要な本がある人はいつでも箱に入れに来てくださいね』というスタイルです」と堀さんは説明する。
大町市には登山や観光目的の人も多く訪れるため、旅行者が本を持ち帰ることもあるというが、堀さんは「思い出にのひとつにしてもらえるなら全然構いません。いつかまた大町を訪れたときに、本を提供してくださるのも歓迎しますよ」と話す。
2017年と2021年に大町市で開催された「北アルプス国際芸術祭」で来日した台湾の絵本作家ジミー・リャオさんは、この取り組みを見て痛く感動。街中図書館をテーマにした作品を発表したり、オリジナルのブックカバーをデザインしたりしたほか、段ボール箱の代わりになる頑丈な木箱も提供してくれたという。
現在、街中図書館は15箱ほどで展開中。本の取りまとめなどを担当する塩入家具の塩入政男さんは「息の長い取り組みになり、ここではすっかり日常風景に溶け込んでいます。今でも、毎日のようにどんな本があるかチェックしている人もいるんですよ」と微笑む。
大町市は、立山黒部アルペンルート(4月15日全線開通予定)の長野県側の入口に当たる。もし大町に立ち寄ることがあるなら、下仲町商店街にもちょっと足を延ばしてみてはいかがだろう。
(まいどなニュース・黒川 裕生)
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