誰が欲しいのか、誰のためなのか、いやそもそも写っているのは誰なのか-。絶対要らない、でもなぜかコンプリートしたくなる気持ちを抑えられない、そんな意味不明なガチャガチャ(カプセルトイ)がある。入っているのは「赤の他人」の証明写真だ。
その名も「証明写真ガチャ」。考案したのはプロデューサーの寺井広樹さん。結婚式ならぬ「離婚式」や、涙を流して気持ちのデトックスを図る「涙活」の発案者だ。
精巧なフィギュアや面白いおもちゃが山ほどある中、なぜ「証明写真」なのか。曰く、「最近のSNSに投稿される写真はどれも『盛られた』ものばかり。一方で最近の証明写真は仕上がりがキレイですが、むしろ『削る』といってもいいぐらい『素』な感じが現れている」と魅力を語る。
確かに、証明写真機で撮影した自分の姿に衝撃を受けることは少なくない。この、全て晒された…もう本当に許してください、と思うが、その「素」が良いという。「例えば結婚式は『盛る』けれど、離婚式には盛る必要もない完全な『素』の世界。涙活も、泣くときの人間は『素』に戻ります。私は文具店のペンコーナーの試し書きを収集するのが趣味ですが、これも誰かに見せるものではないので『素』が出てくる」のだそうだ。
うんちくはこの程度で、気になるその中身だが、第1弾は10人の写真を1枚1枚ハサミで切り離し、カプセルに詰める。大学生っぽい子に、パートに応募する主婦っぽい人、資格試験に挑戦する社会人やデザイン事務所に転職活動中のクリエイターも。中には現役の小学校教頭もいるそうだ。知人などに頼んだり、呼び掛けに応じてくれたりした人だといい、わざわざ郵送で送ってもらったものもある。
ごく普通の証明写真だが「コロナ禍でマスクが当たり前になり、人の素顔を見るのも難しい時代。それぞれの人の証明写真を見て、この人どんな仕事に応募するのだろうとか、絶対酒飲み…とか想像するのも楽しいです」と寺井さん。レコードのジャケットに貼ったり、カプセルごとインテリアとして飾ったりするのもアリ、だそうだ。
ちなみに、証明写真が剥がれてしまった時のために、写真に写っている本人が裏面に氏名をペンで手書きされているものも、何枚かに1枚入れてあるという。
カプセルトイの販売機は、映画「天気の子」で主人公がバイトで働く編集プロダクションのモデルになったともいわれる東京・神楽坂のPEANUTS CLUBの入り口外側に設置し、3月26日から販売する。1個300円。
ちなみに、ダミーをFacebookで告知したところ、「自分もモデルになりたい」という人が相次いだといい、売れるかは不明だが既に第2弾も検討しているという。
(まいどなニュース/神戸新聞・広畑 千春)
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