アスレチックやプールを備えた山間のキャンプ場を会場に、若者たちが手づくりで続けてきた夏の野外音楽フェス「ONE MUSIC CAMP」が今年、コロナ禍での2年連続中止を乗り越え3年ぶりに開催される。特に2021年は、本番のわずか3日前に中止が決定。会場の設営も全て終えていたが、感染状況を踏まえたアーティストの出演辞退などが重なったことで、地元との関係も考慮して苦渋の決断を下すことになった。クラウドファンディング(CF)で支援を募り、今年までどうにかフェスの灯をともし続けたフェス運営事務局の中心メンバーに、今の思いを聞いた。
ONE MUSIC CAMPは2010年に誕生。会場は兵庫県三田市波豆川にあるキャンプ場「三田アスレチック」で、ロックやヒップホップなどを中心とする音楽ファンを唸らせる絶妙なラインナップと、子供連れでも気兼ねなく楽しめるキャンプ型のフェスとして人気を誇り、熱心なリピーターも多いことで知られている。
もともとは音楽好きの20代の若者たちが「自分たちでも音楽フェスを開催してみたい」と集まり、手探りで始めたフェス。2010年の第1回の来場者数はわずか30人ほどで、蓋を開けてみれば大半が主催者の知り合いという状態だったという。それでも回を重ねるごとにイベントのファンは着実に増えていき、くるりやeastern youth、七尾旅人、ROTH BART BARONなど国内外のアーティスト37組が出演した10周年記念の2019年には、2日間で延べ2600人が来場した。
■コロナ禍で無念の2年連続中止
次の10年を見据えた大切な一歩となるはずだった2020年は、コロナ禍の影響で夏前に中止が決定。大口のスポンサーはついておらず、ほぼ全ての資金をチケットとグッズ販売、フードや物販の出店料だけで賄っているため、中止によって広告費や各種業者へのキャンセル料などが赤字として運営チームにのしかかってきた。危機的状況を打開しようとCFで運営費の支援を呼び掛けたところ、イベント存続のために209万円余りと温かいメッセージが寄せられ、翌年に希望を繋ぐことができた。
ところが2021年は、開催直前に中止が決定するという非常事態に。「内部でも最後の最後まで開催するか中止するかで協議を重ねました」と事務局の野村優太さんは明かす。
事務局のメンバーはそれぞれ会社員やデザイナーなどの本業を持ち、フェス事業に関してはそもそも門外漢の集団。東京在住の野村さんも、開催の可能性に暗雲が立ち込め始めてから1週間ほどは、大阪のビジネスホテルに泊まり込み、昼間はリモートで仕事をこなしつつ、夜は関西在住の他のスタッフらと対応を話し合ったという。
「開催しようと主張する人もいれば、十分な医療体制を確保するのは難しいと二の足を踏む人もいて、議論はずっと平行線。かと思えば、開催を強行した他の音楽フェスがその是非をめぐって炎上状態になったり…。感染者数も含めて状況が目まぐるしく変わっていくので、大阪滞在中は1週間ほとんど寝られませんでした(笑)」
実は中止が決定した時点で、サニーデイ・サービスなど一部の出演者は別の公演との関係ですでに関西入りしていたほか、会場に出店する飲食店の仕入れや、設営が完了していた音響設備の撤収など、土壇場でキャンセルしたことによってあらゆるところに影響が生じたため、野村さんらスタッフはしばらくその後始末に忙殺されることに。それでも事務局の深川浩子さんは「地元三田、波豆川の皆さんに迷惑を掛けるわけにはいかないので、どちらが正解だったかは今もわからないけど、中止の判断は結果的に良かったと思う」と振り返る。
■フェス運営はライフワーク「やめるという選択肢はない」
2021年もCFを実施し、約147万円の支援が寄せられた。そして2022年。「今年もまだ読めない」と警戒しながらも、8月27日、28日の2日間、3年ぶりとなるフェス開催に向けて着々と準備は進む。
2年連続中止という苦難に見舞われても、心が折れて「もうやめてしまおう」という気持ちにはならなかったのだろうか。
「なりませんよ」と即答するのは、スタッフの南潤さん。「そもそも無事に開催できた年だって、大変すぎて毎回『もうええわ』と思っているくらいですから(笑)」
一方、深川さんは「フェス運営はすでに私たちのライフワークになっているんです。自分たちの『好き』から始まった野外フェスですが、今は三田の方や、老若男女が楽しめる『お祭り』として地域に根づいています。この先も『ONE MUSIC CAMP』が特別な音楽体験と文化の発信地となっていければ、と考えています」と力を込める。
◇ ◇
現時点(5月9日)で発表されている今年の出演者は、Afro Begue、bonobos、DYGL、蓮沼執太&ユザーン、奇妙礼太郎、サニーデイ・サービス、SuiseiNoboAzなど。発売中の各種チケットなど、詳しくは公式サイトで。
(まいどなニュース・黒川 裕生)
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