血も涙もない展開で目が離せないと話題沸騰のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」効果で、28年前に刊行された「マンガ日本の古典」シリーズ(全32巻)の一作で、脚本の三谷幸喜さんが「これが原作のつもりで書いている」と明言したことで注目を集めた「吾妻鏡」(全3巻)が、異例の売れ行きを見せている。直近では月平均130冊ほどで推移していた売り上げが、今年に入ってから一気に約1000冊まで急増し、店頭では売り切れが続出する事態に。今年3月に緊急重版したが、5月現在も勢いは全く衰えていないという。発行元の中央公論新社に聞いた。
■漫画界のレジェンドが一堂に会した名シリーズ
「マンガ日本の古典」シリーズは1994年に刊行開始。「古事記」や「源氏物語」、「今昔物語」、「平家物語」、「徒然草」などの名作古典23作を、石ノ森章太郎さんや水木しげるさん、安彦良和さん、里中満智子さんら22人の“レジェンド”が漫画化した一大シリーズで、1997年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞している。
「吾妻鏡」は鎌倉時代に成立した歴史書で、鎌倉幕府の初代将軍である源頼朝から6代将軍の宗尊親王までの幕府の事蹟が記されている。同シリーズで執筆を担当したのは、「風と木の詩」「地球へ…」などで知られる漫画家の竹宮惠子さん。躍動感あふれるタッチで中世武家社会を描き、源頼朝の実像に迫る。もちろん、「鎌倉殿の13人」の世界をより深く知る補助線になることは言うまでもない。
■漫画で読める「吾妻鏡」は他にない
「すごい反響です」と声を弾ませるのは、中央公論新社の販売担当者。やはり三谷幸喜さんが執筆に際して「『吾妻鏡』が原作のつもり」と発言した影響が大きいという。担当者はさらに、「漫画で読める『吾妻鏡』が本作の他にはないことも、売り上げの急増に拍車をかけたのではないか」と見る。
実際、筆者も大型書店に立ち寄るたびにそれとなく「吾妻鏡」をチェックしていたのだが、シリーズでそこだけ在庫がないというシチュエーションに何度も遭遇。ようやく購入できたのは5月になってからだった。担当者によると、「吾妻鏡」は3月に全3巻を各5000部増刷したばかり。「普通はある程度売れると落ち着くのですが、『吾妻鏡』の売れ行きは“高止まり”が続いており、今も落ちていません」と話す。
「鎌倉殿の13人」は破格だとしても、これまでも他に大河ドラマの影響などでシリーズの売り上げが伸びたことはあるのだろうか。
「例えば2012年の大河ドラマは『平清盛』でしたが、こちらは漫画のライバルが多かったこともあってか、シリーズにある『平家物語』(全3巻、横山光輝)はそれほど動きませんでした。それだけに、今回の『吾妻鏡』の売れ方は本当に驚きです」(担当者)
同シリーズを担当した当時の編集者はすでに退職しているといい、残念ながら取材は叶わなかった。販売担当者は「28年経ってもなお支持される、とてつもない財産を残していただいたと思っています」と感謝する。
■さらにすごかった「クイズ王」効果
…と、ここまで「鎌倉殿の13人」効果がいかにすごいかということばかり書いてきたが、実は「マンガ日本の古典」シリーズには過去にもっとすごいことが起きていた。それは、「東大最強のクイズ王」として人気を博した伊沢拓司さん効果である。
「伊沢さんがメディアなどで本シリーズを推薦してくださったことで、2019年から2020年7月までの約1年半で全32巻、累計100万部を重版しているんです。ワイド版の刊行も、その反響を受けてのこと。さらに石ノ森章太郎さんによる『マンガ日本の歴史』も新装版で刊行を始め、今年の6月に完結予定です」
ちょっと待ってくれ、伊沢さん、すごすぎる…。いや、今後の展開によっては「吾妻鏡」もさらに売れるかも? 「鎌倉殿の13人」、いろんな意味でますます目が離せません。
(まいどなニュース・黒川 裕生)
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