エレベーターに乗り込んだ際、設置されている鏡で、髪型をチェックをしていることってありませんか。実は「身だしなみを整えるため」ではなく、鏡が設置されている本来の意味は別にあります。SNSではその理由について話題になりました。
「「エレベーターの鏡は髪型やメイクを直すためのものではなく、車椅子ユーザがバックで出るためのバックミラーなんです。」とつぶやくと、一部の学生から「知らなかった!」という反応がありました。「鏡は車椅子ユーザのために設置されたものですが、多くの人の役に立つ。この感覚を知ってほしいです。」と伝えた」というツイートが話題になっています。
本来の理由に驚かれた方が多かったようで、リプ欄には「ユニバーサルデザインを学んだ時『身障者などが使いやすいデザインは、結局、健常者にも使いやすい』と、言われたことを思い出しました」、「意図されたかは定かではありませんが、閉所恐怖症の方も(特に狭いエレベーターの場合)鏡の恩恵を受けているそうです」という反響があり、「いいね」は2万件を超えました。
このエレベーターの鏡のように、ユニバーサルデザインを活用すると、健常者、障がい者という垣根を超えて、誰もがもっと心地良く過ごせる社会になるのではないでしょうか。投稿者で兵庫教育大学准教授の小川修史さんに「この感覚を知ってほしい」という意味について話を聞きました。
■バリアフリーからユニバーサルデザインへ
ーー鏡の設置については条例で義務付けられているそうですが、周知されなければ、鏡の前に健常者が立ってしまって見えないこともあるのでは。
「周知をする必要はあると思いますが、その場合、鏡の前に『障害者の方のためのものです』とシールを貼る発想になりがちです。しかし、障がいのある方は、『特別扱い』されることを望んでいません。身だしなみを整えるために使っても構わないと思います」
ーー鏡が果たす役割は一つではないのですね。
「一方で、『バックミラーとして使う』という情報がもっと広まるべきですし、知っていれば車椅子ユーザがエレベーターに乗っている時に配慮することができます。障がいのある方だけが利用するバリアフリーの考え方ではなく、ユニバーサルデザインという考え方が広まることが大切だと思います」
ーーバリアフリーとユニバーサルデザインの違いについて教えていただけますか。
「バリアフリーの考え方は仰る通り障壁を取り除く『障害者のためのもの』になります。ユニバーサルデザインの考え方は『障害者のための』ではなく、『もともと誰もが使えるもの』という発想で設計されています」
ーーユニバーサルデザインは、たとえばどのようなものに生かされているのでしょうか。
「両者の区別は難しいのですが、ユニバーサルデザインと呼ばれるものは、バリアフリーの発想から生まれたものが多くあります。たとえば、スロープはベビーカーでも通る事ができますし、広い自動改札はベビーカーやキャリーケースでも通りやすい。電気のスイッチは暗いところでも押しやすく作られているものもありますし、シャンプーとリンスのボトルに付いている突起は、洗髪時に目を閉じていても判別できるようになっています」
■「してあげる」ではない、「誰もが楽しめる」社会の実現
ーー今後、もっとユニバーサルデザインの考え方が広まるといいですね。
「メディアやSNSでアウトプットすることが大切だと思います。誰かが声を上げ、その声が大きくなれば、世の中は変わっていくことを実感しています。SDGsや障害者差別解消法も追い風になるでしょう。障がいのある方を排除することがない世の中は、意外と遠くないのかもしれません」
ーー先生は、ファッションのデザインでその壁を取っ払おうとしていらっしゃるのですね。
「今年秋、パリコレウィークにファッションショーを開催します。障がいの有無や性別に関わらず、誰もが心躍るデザインで発表します。『してあげる』というバリアフリーの発想から、『誰もが楽しめる』というユニバーサルデザインの発想に切り替われば、実現できると思っています」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)
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