銀行の課長職といえば男盛りの40歳代。単身赴任中は奥さんの目が届かないのをいいことに、魔が差すこともあるようだ。ちょっとした心の緩みから漏らした一言で、自ら不倫を暴露してしまった課長の末路とは…。警備業界で見聞きしたエピソードを紹介したい。
■開放感と寂しさが入り混じって魔が差す?
転勤はサラリーマンの宿命とはいえ、家族が転勤先までついてきてくれるとはかぎらない。奥さんが仕事をもっていたり、子供を転校させたくないなどの事情があったりして、単身赴任せざるを得ないこともある。
筆者がサラリーマン時代に警備していた都市銀行では、課長以上の管理職は2~3年ごとに転勤を繰り返した。
都市銀行は全国に支店を展開しているから、異動は全国規模になる。課長クラスだと40歳代後半の男盛り。ふだんは奥さんに家事を任せているから、単身赴任先では気楽な反面、生活上の不便がいろいろと出てくる。とくに独り暮らしや寮生活を経験していない人は、洗濯機の使い方を知らなかったり、お湯を沸かすことすらできなかったりするという。
そんな事情に配慮してか、銀行側では単身赴任者にも賄い付きの寮を用意して、せめて食事ぐらいは不便がないように配慮していたようだ。
だが人の生活は、外的な環境を整えたらいいというものではない。やはり、精神的な癒しを求めるのが人情というもの。束の間の独身を楽しんでいながらも、家族と離れて孤独を感じている課長と、部下の女性行員がいつの間にか不倫関係に陥ってしまうという、B級ドラマみたいな出来事が実際にあった。
■「もしかして不倫?」噂の関係を自分でバラしちゃった
42歳独身で、課長補佐の肩書をもつ女性行員がいた。仮にMさんと呼ぶ。Mさんは、実年齢よりそうとう若く見える人だった。
Mさんの直属上司は、東京に奥さんと子供を残して大阪へ単身赴任してきたばかりの課長で、体形はややメタボ、顔はいつも脂ぎってテカテカ光っていた。人を外見で評価してはいけないが、若い女性行員らの評判は芳しくなかった。
ところがこの課長、赴任してきて間もなく、行員たちの間でMさんとの仲を噂されるようになった。
午後5時ちょうどに就業時間が終わると、行員たちは一斉に通用口から出ていく。残業はほとんどなかった。
課長も5時の時報とともに、上の階からエレベーターで下りて来るが、すぐには出ていかない。エレベーターホールでMさんを待って、一緒に通用口を出ていく。それがほぼ毎日である。
「課長とMさんの仲が怪しい」
噂はすぐに広がった。行員の中には「銀行を出たその足で、2人がホテル街に消えて行った」という、まるで見てきたような話をする者まで現れた。
今だったら画像付きで瞬時に、SNSで拡散されてしまうだろう。当時はまだインターネットすらなく、噂話は人から人へ言葉で直接伝わっていく時代だった。
支店じゅうの噂になっても2人は悪びれる様子もなく、退勤時間には相変わらず2人一緒に通用口から出ていく。開き直っているのか、あるいは本当にやましいことがないから堂々と振る舞っているのかもしれない。
この噂の真相が、思わぬ形で明らかになるときがきた。
夕方、課長はいつものように、1人でエレベーターホールにいる。この日も、Mさんが下りてくるのを待っているのだろう。
この銀行では勤務中の服装は、男性行員は自前のスーツだが、女性行員には制服がある。勤務時間が終わったら更衣室で着替えるから、下りてくるのはどうしても男性行員より遅くなる。
ほどなく、Mさんが下りてきた。
Mさんは「お待ちになりました?」と課長に微笑みかける。周りには他の行員がいるのに、まったく憚る様子がない。ここまでは、いつもの光景だ。ところが、何を思ったか、課長がとんでもない一言を放った。
「お前、脱ぐのも早いけど、着るのも早いなぁ」
周りの空気が一瞬で凍り付いた。Mさんの顔はみるみる真っ赤になり、課長は明らかに狼狽している。取り繕うにも、すべて後の祭り。Mさんとの不倫関係を、自ら暴露してしまった。
それから間もなく、課長に「関連会社へ出向」の辞令が出た。不倫そのものは規則違反に当たらないが、道義的な責任を問われたようだ。出向になれば、再び銀行に戻ってこられる可能性はゼロに近いといわれていた。事実上の左遷人事だった。
Mさんにお咎めがあったかどうかは、定かではない。その後も銀行で勤務を続けたようだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)
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