こんな風に、ありのままの姿で愛される猫が増えてほしい。そう思わされる関係性を築いているのは、保護猫のほっけちゃんとその飼い主さん(sabatora_hokke)。ほっけちゃんは、元野良猫。先天性の脳性麻痺を患っており、母猫に飼育放棄されたため、動物愛護センターへ。飼い主さんはほっけちゃんに障害があることを承知のうえで、家族の一員になってほしいと強く思いました。
■心の底からかわいいと思った先天性脳性麻痺のほっけ
当時、飼い主さんは子どもたちが大学に進学し、夫婦2人となった生活に寂しさを感じ、保護犬や保護猫を迎えたいと思うように。そこで、動物愛護センターのホームページをチェックすることにしました。
すると、真っ先に目に飛び込んできたのが、ほっけちゃん。
「こんなかわいい子が欲しいと思い、問い合わせました。介助が必要と記載されていたので、どの程度かも知りたいと思って」
面会当日。職員の方からは、ほっけちゃんは頭がすわっていないため、ご飯や飲水時は頭を支えてあげたり、排泄を促してあげたりする必要があることを聞かされました。
こうした説明を受けると、戸惑う人もいるものですが、飼い主さん的にはノープロブレム。
「ぜひ、この子を家族にしたいと担当の方に熱くお願いしました。ただ、もう1件、面会希望があるため、数日、待機してくださいと言われました」
ところが、予想に反し、その日のうちに里親に決まったとの連絡が。
「担当の方に、なぜうちを選んでくれたのかと聞くと、『否定的な言葉が1つもなかったから』だと言っていただきました。名前は、娘から好物である「ほっけ」がどうしてもいいと押し切られ、決定しました」
お迎え後はケージを使いながら、おうちに慣れてもらえるように工夫。夜は、飼い主さんと帰省した娘さんが交代でケージ横に布団を敷き、ほっけちゃんを見守りながら眠りました。
「ほっけは、子猫の頃から人懐っこい性格。しょっちゅう座布団から転がり、段差間で落ち着いていました。気持ちいいのか落ち着くのか、なぜかいつも挟まっていました(笑)」
持病のほうは、獣医師から「薬を飲み続けましょう」との指示を受けたため、投薬を継続。脳に障害があると、麻酔で命を落とす危険があることから、不妊手術は行わずに成長を見守ることにしました。
■構ってアピールに振り回される日々が愛おしい
出会いから2年ほど経った今、ほっけちゃんは頭がすわるようになり、食事の時や飲水時にガクガクしなくなったのだとか。
日々のお世話は、夫婦2人で協力。娘さんや息子さんも、帰省時には率先してほっけちゃんのお世話をするのだとか。
「てんかん薬など色々なお薬を試し、今はビタミン剤を毎晩飲んでいます。体幹がないため、体のバランスを取ることが難しいですが、本人は頑張っています。時折、起こる発作が心配ではあるものの、すこぶる元気です」
トイレは時間をみて連れて行きますが、ほっけちゃんはおしっこに行きたいと、砂をかく仕草をして教えてくれることも。
「排泄やお留守番をするのでケージは、大型犬が一時待機できる特大サイズ。発作で体が飛ぶため、リビングには毛布とクッションを用意しています」
共に過ごす時間が長くなるにつれ、飼い主さんのほっけちゃん愛は増大。例えば、食事の介助時に少しだけ残ったキャットフードを自分の手からしか食べない姿に胸キュン。
「面倒くさいのでしょうか(笑)こらーと言いますが、かわいくてたまらないので、ほっけに従います」
また、少し離れて会話をしていると、「みゃん!」と強く鳴き、自分の存在を示す“構ってアピール”にも心奪われているよう。
「これが本当に愛らしくて…。ほっけが寝ているから…とスマホを見ていると、起きて「ん"ー」とアピールしてくることもあります。あと、すごく怒っている時は必ず「にゃにゃうー」といいますね(笑)」
そんなほっけちゃん、なぜか旦那さんに対しては帰宅しても知らんぷりを決め込むなどの塩対応。一緒に寝ている時に要求を訴えても家族が起きてくれない場合、旦那さんへの当たりだけが強いのだとか。
「私や娘には顔をちょいちょいする程度に留めますが、夫のことは強く引っ掻いたり、顔をガブッと噛んだりします。夫は毎日、ほっけにメロメロなのに(笑)」
この子と出会ったのは、運命。そう話す飼い主さんにとって、ほっけちゃんは「生きがい」そのもの。
「多分、本人は自分の病気を障害とは思っていない。だから、構え過ぎず、一生懸命な本人を、そっとサポートしていきたいです」
ほっけちゃんにとって飼い主さんたちは、心許せる家族。持って生まれた病気も含め、愛してくれる日々が幸せであるからこそ、ほっけちゃんはお喋りさんになったのかもしれません。
伝えてくれる豊かな猫語には「大好き」と「ずっと一緒にいようね」という気持ちも込められていそうです。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)
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