6月3日、漫才や漫談専門の演芸場として知られる東京浅草の東洋館・浅草フランス座演芸場で珍しいイベントが開催された。「尾藤イサオ&高道 ジョイントライブ」…その名の通り、永遠のロカビリースター尾藤イサオさんと、「狩人」で一世を風靡した高道さんによるライブだ。近年、お二人が「夢コンサート」などで共演を重ねていることは知っていたが、なぜ音楽向けのホールやライブハウスでなく演芸場でライブを開催することになったのだろうか。リハーサルの合間、フランス座にほど近い喫茶店でお話を聞いた。
ーー浅草の演芸場でライブされると聞き、少し意外に思いました。
高道:二人で一緒にやろうという話は去年の年末くらいに出ていたんですが、会場を探す中でたまたまフランス座に来ることがあったんです。雰囲気やキャパシティーもいい感じだし、浅草という場所も尾藤さんに縁があっていいんじゃないかと思い決定しました。
尾藤:僕はこの近くの御徒町で生まれたんです。上野や浅草はすぐ近所。昔はフランス座のすぐ前に瓢箪池っていう大きな池があって、子供の頃はそこでよく友達たちと集まって遊んでいました。僕は音楽を始めるまで曲芸師の仕事をしていたんですが、その頃も浅草にはよく通ったし、ロカビリー歌手を始めてからも「新世界」というジャズ喫茶で歌ったり。だから今回の会場が決まった時は嬉しかったですね。
ーーお二人とも「THE 夜もヒッパレ」(日本テレビ)によく出演されていたイメージがあります。いつからのご縁になるんでしょうか?
高道:ヒッパレで兄(加藤久仁彦)と尾藤さんは共演してるんですが、僕は共演してないんですよ。嫌われてたのかな(笑)。
尾藤:いやいや(笑)。ずっとすれ違いでなかなか共演する機会がなかったんです。その後、夢コンサートに出るようになって親しくなりました。そして今回こうやって二人だけでやってみようと。
ーー今回はどんな演目を予定されているんでしょうか?
尾藤:それぞれカバー曲や自分の曲を歌うけど、二人でも一緒にビートルズを歌ったりタップダンスを踊ったり…今回はとにかく盛りだくさんです。
高道:ジャグリングもするし、初めての曲にもチャレンジします。フランス座と言えば下積み時代のビートたけしさんが舞台に立っていた場所だから、この機会に「浅草キッド」(1986年)を。元々エネルギッシュでいつまでも向上心のある方だとは思ってましたけど、79歳になって新しい曲や演目をやろうというエネルギーにはおみそれしました。
尾藤:僕は舞台に立つしか能がない人間なので、せっかく高道さんにもらえたチャンスなんだからしっかり取り組みたいと思うだけなんです。正直「80歳近いのに大丈夫かな?」と頭によぎることもありましたよ。でも「まだまだ出来る!」と言い聞かせながら、今日まで練習を重ねてきました。こんな年になってもチャレンジできて刺激的な時間を過ごせていることが嬉しいんです。
ーー現在、尾藤さんは78歳、高道さんは62歳。見た目もパフォーマンスも年齢を感じさせません。お二人にとって若くあり続けるための秘訣は何でしょうか?
高道:僕は50代で生活を見直しました。好きだった煙草をやめて、トレーニングをするようにしたり。
尾藤:僕は特別なことはしていません。この仕事さまさまですね。いつになっても定年や引退がないので、決まっている仕事に向けて頑張るということを積み重ねているから緊張感を保てているんだと思います。
高道:尾藤さんは僕より16歳年上なんですが、よく食べてよく寝ますよね。芸能界で長年元気にやれてる人って、そういうタイプが多い気がします。
尾藤:そうですね。元々、あまり好き嫌いはありませんし、僕がこの仕事を始めた頃はまだまだ食べ物が貴重な時代でしたから、地方に行ったりした時に出してもらった料理は失礼がないように全部いただく。そして不規則なスケジュールだから、移動時間とか隙間の時間にはなるべく寝る。これも仕事で身についた習慣ですが、体力を維持するのに欠かせないことだと思います。
ーーオフの日はどう過ごされているんでしょうか?
高道:たまにゴルフや競馬に行くくらいですね。昔は朝まで麻雀やったりしたけど、今はさすがにね(笑)。
尾藤:僕は仕事のない日はだらしなくてね。ずっとゴロゴロしてるんで、家族には「雷さん」って言われてるんですよ(笑)。40 歳頃にゴルフを始めたことはあったけど、長続きしなかったし、本当に無趣味な人間なんです。
高道:でも銭湯にはよく通ってますよね?地方の仕事の時も、合間を見つけてはしょっちゅう銭湯やサウナに行ってるイメージです。
尾藤:趣味と言えるかわからないけど、たしかに昔から銭湯は好きですね。一緒に行く友達も何人かいるんです。この前はジョン・カビラさんとご一緒しました。
ーーお二人は最近の音楽についてどう感じておられますか?
高道:僕は積極的に聴くようにしています。「懐メロ歌手」って言われるのが一番嫌なので、気に入った曲があれば自分のレパートリーにしてライブで歌っています。最近のお気に入りは米津玄師くんです。
尾藤:僕もヒッパレで毎週、最新のヒット曲を覚えるという経験をしてから、なるべく積極的に若い人たちの音楽に触れようと心掛けています。高道さんみたいに最新の曲というわけにはいかないですが、スターダストレビューが好きでライブにも行きますよ。
ーーお二人の今後の抱負をお聞かせください。
高道:僕はオールラウンドプレイヤーでありたいですね。歌謡界の高田純次的な(笑)。演歌、歌謡曲からポップス、ロックまで、個人としても、コラボレーションでもいろんなことを柔軟にこなせる歌い手でありたいです。
尾藤:健康で長生きして、最後まで芸人でありたいです。みなさんに「尾藤イサオ頑張ってるな。よし、俺も頑張ろう」と思ってもらえるような存在になれたら最高ですね。
◇ ◇
インタビュー後、フランス座でおこなわれたライブはエルヴィス・プレスリー「監獄ロック」(1957年)のカバーで幕を開けた。プレスリーにあこがれ、音楽の世界に飛び込んだ尾藤さんならではのワイルドなシャウトと、涼やかなコーラスワークでそれを支える高道さん。何度も年齢のことを言うのは気が引けるが、お二人の年齢を感じさせない超絶パフォーマンスを見ていると芸能界の後輩として身が引き締まる思いだ。
その後、インタビューで聞いていた通り、ジャグリングや傘回しといった曲芸、タップダンス、ビートルズのメドレーなど多彩すぎる演目が繰り広げられる。僕の前の席にはテリー伊藤さんがいて手を叩きながら「すごいね!すごいね!」と繰り返していたが、まさに同感。後半の「あしたのジョー」(1970年)、「悲しき願い」(1964年)、「あずさ2号」(1977年)といったオリジナルヒットの連発も圧巻だった。
尾藤イサオさんと高道さん。この二人のスターの輝きは生まれ持った才能だけによるものではない。スターであり続けようという向上心と日々の研鑽、そして周囲の人に愛される温かい心が備わっていたからこそ何十年という年月を厳しい芸能界を生き抜いてこられたのだろう。ぜひいつまでもお元気で、芸能界を、社会を照らし続けていただきたいお二人だ。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)
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