1889年頃にアメリカのアイオワ州に生まれたチャーリー・バワーズという映像作家をご存知だろうか。新聞漫画界から映画業界へ入り、以後コマ撮りアニメと実写を融合させた作品を発表。観客の一部からは評価されたが、トーキー映画などの時代の波に飲みこまれ、いつしか忘れ去られてしまった映像作家だ。生誕も諸説ありというそんな謎の人物が手掛けた映画が、制作から約100年経った2022年に日本の劇場で上映されている。
映画タイトルの中には「たまご割れすぎ問題」など、ちょっとヘンテコなものも含まれており、本特集上映の発表後はSNS上でもちょっとした注目を集めた。はてさて「たまご割れすぎ問題」、当時はどんな解決法があったのか…。
特集上映「チャーリー・バワーズ 発明中毒篇」を配給するプラネット映画保存ネットワークの田中範子さんにバワーズの魅力を聞いてきた。
で、バワーズの映画の感想を初めて聞いた時の答えがコレだ。
「意味不明ですよね」
意外な返答だった。神戸映画資料館の支配人でもある田中さん。「緻密な○○」とか「あの描写が××ぽい」といった答えを予想していただけに、虚をつかれた。田中さんは「辻褄が合っていなくて、登場人物の動きもなんなん!?」と思ったそうだ。
「特に『怪人現る』なんて、異次元感、狂ってますね」と田中さん。しかし、その奇妙な魅力に一目惚れ。初配給を決めたという。100年後の映画ファンも映像の力で魅了する、すごいなバワーズ。
■割れすぎ問題解決?そして新しい発見も
さて、問題の「たまご割れすぎ問題」(1926年)は、「割れないたまごの製造機械を発明する」という命題に向かって主人公が奔走するお話。機械完成のために出資を募るシーンや、たまごからあるモノが孵るところなど、実写とコマ撮りが融合した23分の喜劇だ。バワーズの実写映画デビュー作でもある。
本作を評価しつつ、田中さんはこう力を込める。
「この特集上映でバワーズの波をつくりたい」
どういうことか。「彼の名前を知っているのは本国のアメリカでも一握りだけなんです。アニメーション好きには認知度があったがそれもごく一部。日本で配給したいと権利元に交渉した時も、相手はポカンとしてましたよ(笑)」。実力があっても知名度がなければ映画興行は難しいのだ。今回の特集がヒットすれば、アメリカよりも、日本に住む人の方がバワーズに詳しくなるという逆転現象が起こるかもしれない。100年前のバワーズさん、今、日本ですごいことが起ころうとしていますよ。
TikTokやショート動画など、近年は短くて面白い動画がバズりやすい。バワーズの映像は今の映像作家らの目にも新鮮に映るのではないか。田中さんは「勉強にはならないかもしれないが、とにかく想像力を掻き立てる」と評する。バワーズを「発見」するチャンスは今。その目でバワーズの存在、そして「たまご問題」の行方を目撃せよ!
◇ ◇
【上映情報】
10月8日から大阪のシネ・ヌーヴォ、11月5日から兵庫の元町映画館ほか順次公開。
(まいどなニュース特約・宮本 裕也)
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