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「キレるツボがわからない」噛み癖のある保護犬  保護シェルターで5年の月日を費やし、幸せをつかむまで

2022/10/09 10:30

広島にあるペット保護・譲渡活動を行うピースワンコ・ジャパン(ピースワンコ)は、これまで広島県内の殺処分対象の犬を引き取り、過去7000頭以上を助けてきた団体です。「ドリームボックス」という犬の殺処分機の稼働を止め、日本全国の犬の「殺処分ゼロ」の実現を目指しています。

保護当初、「どこがキレるツボなのか」が全然わからず、突然人に噛み付くような態度を取る気性の荒い犬が来ました。その名も元就(もとなり)。短毛の骨太の和犬で、確かに怒ると怖そうな表情。当初は、スタッフでさえ元就の体に触るのを躊躇したと言います。

■人懐っこくなり笑顔を見せるように

しかし、スタッフの献身的なケアや人馴れトレーニングによって、元就な「人間は敵ではない」こと少しずつ理解し、よくからなかった「キレるツボ」もなくなりました。やがて、どんな人でも噛み付くことがなくなりました。

また、特に散歩に連れていってくれる人には一気に懐っこくなり、後には散歩のリードを引っ張る人間の顔を見て「友達だ」と認識するのか、振り返って見ては楽しそうに接するようになりました。

素敵な笑顔を浮かべた元就からは「かつて噛み犬だった」ということが想像できないほどの、大きな成長を遂げました。

■散歩中の元就が一つだけ譲れないものとは

人に慣れるどころか、むしろ友達のように仲良く接してくれるようになった元就ですが、しかし、そんな彼にも一つだけどうしても許せないことがありました。

それは松ぼっくり。散歩中に見つける松ぼっくりが大好きで、ときに座り込んで動かなくなったりすることも。さらにその大好きな松ぼっくりを取り上げて、先に進もうとすると、こういうときだけはウーッと怒ります。

スタッフはそんな元就の様子も楽しそうに見つめます。問題といえば、この「松ぼっくり好きすぎる」くらいに成長そてくれたので、スタッフは新しい里親さんに元就を譲渡できると判断しました。

■「元就と一緒にお互いに健康で長生きしたい」

里親募集を行ったところ、元就の新しい里親さんはすぐに見つかりました。元就のもともとの気性の荒さも十分理解した上で迎え入れることにしたそうですが。

ピースワンコで過ごした5年もの月日を経てめでたく新しい里親さんの元へと巣立っていきました。長い間、生活を共にした元就なので、お別れのときはつい目が潤むスタッフもたくさんいました。

里親さんから「信用してくれたか?」と言われると、元就は安心した様子で里親さんを笑顔で見つめ返しました。

シニア世代の里親さんは「元就と一緒にお互いに健康で長生きしたい。それしかない」と語ってくれました。そして元就は今日も元気に、新しい里親さんのもとで幸せに生活をしています。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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