10月になってすぐ、故郷の岡山を訪ねる機会があった。目的は神戸おかやま会という県人会の日帰り旅行の候補地ハンティング。県南西部、倉敷市の西に接する山陽道の宿場町、矢掛に狙いを定めてあった。かつては中国、九州地方の大名の参勤交代がひっきりなしに通って栄えた町で、当時の面影が保存された街並みには観光客が行き交う。
神戸おかやま会の参加メンバーと丸一日を過ごし、翌日は昼間から行きつけの日本酒の店へ向かった。「日本酒バル解放区」というその店を初めて訪ねたのは5年ほど前だったか。あてもなく日本酒がおいしく飲める店ということでネットを検索しているうちにたまたま行き当たり、それからは岡山を訪ねた時には必ず顔を出すようになった。
10人も入ればいっぱいになる店を30代半ばの若い夫婦で切り盛りしていて、ご主人は奥の厨房担当、接客は女将の役割だ。魚は県内の牛窓漁港からの仕入れ。日本酒は燗酒用、冷酒用それぞれ15銘柄ほどをいつも揃えてある。細かなところまでこだわった料理もなかなかで、いつも常連客でにぎわっている。
メニューが手書きされた黒板のトップにボラの刺身があったので、まずは注文した。すると女将が「ボラなら珍しいものがありますよ」と黒板の下の方の小さな文字を指した。「ボラの砂ズリのカラ揚げ」とある。
砂地に生息するボラが、エサと一緒に吸い込んだ砂や泥を処理する器官で、役割はまさに鶏の砂ズリと同じ。一般的には「ヘソ」と呼ばれて、刺身をはじめいろいろな食べ方で楽しまれている。ただし、自分では目にするのも口にするのも人生初という珍味。迷わず注文した。
ソロバンという呼び方もあるようで、元々の形は算盤の珠を大きくしたような…と言えなくもない。ただし目の前に出てきた小皿には、それを切り開き、中の砂や泥をきれいに取り除いて食べやすい形に切ったものが揚げられて並んでいた。歯応え、味は鶏の砂ズリそのもの。知らずに口にしたら、魚の内臓などとは気がつかずに終わってしまいそうだ。
コノシロのへしこ、タルタルソースにタラゴン(エストラゴン)の酢漬けを刻み込んだアジフライ…。牛窓産の魚をつまみに、この日は東北泉(山形)、北島(滋賀)、楽器正宗(福島)、長吟(愛知)、高千代(新潟)などを楽しみ、忘れてはならじと故郷の町の酒、大正の鶴で締めくくった。
手帳を見ると年内にもう4回、岡山を訪ねるスケジュールが書き込まれている。さて次なる珍味は?
(まいどなニュース特約・沼田 伸彦)
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