高齢者による猫の不適切飼育は少なくありません。昔通りの飼育するため、どんどん猫が繁殖していったり病気が蔓延したり。当の高齢者は「こんなはずじゃなかった…」と困るものの、対処ができず放置してしまうことも。
大阪府で暮らす80代の女性も困っていた一人。息子が同居していましたが、息子にも猫の知識がなかったため対応が遅れました。それに気付いてくれたのが、女性の介護のため家に出入りをしていたヘルパーです。
猫と暮らした経験のあるヘルパーは、猫たちが女性と息子に可愛がられているのはよく分かります。だから不適切飼育だと伝えるのはつらい。それでも人間が快適に暮らしていくため、猫たちのために言ったんです。
「里親募集をしましょう」
ヘルパーの説得により女性と息子は猫を保護猫団体に託し、譲渡会に出すことを決意しました。2021年1月のことです。母猫と生後3カ月ほどの子猫3匹の里親募集を始めたのです。
この譲渡会へ足を運んだのが、近くに住むO家のお母さんと小学6年生の息子のSくんです。お母さんは昔から猫と暮らしたいと考えていたのですが、Sくんは動物が苦手。猫カフェなどで慣らしてみても、Sくんは猫を触ることすらできませんでした。
それなのに、あの女性が里親募集をしている子猫は抱っこが出来たんです。Sくんも子猫もしっくりきています。お母さんはこの姿を見て、この子猫を迎え入れることを決めました。子猫はまだお乳を吸っていたため、同じケージに入っていた母猫も一緒に迎えることにします。
トライアルを開始し、2匹はO家へ。子猫は家に着いた途端、お母さんのお膝にちょこん。そのままスヤスヤ眠り始めたんです。ビックリビックリ。母猫の方はというと、隅っこに隠れて出てきません。ちゅーるで慣らしながら、様子を見ます。3日も経たないうちに、母猫も家に慣れてきました。
名前は子猫はアメリカの漫画『キャプテンマーベル』に登場する茶トラ猫から「グース」、母猫は同じくアメリカの漫画『シンプソンズ』のお母さんの名前から「マージ」にしました。
実は、グースくんとマージちゃんは親子といえど、実は月齢が5カ月ほどしか離れていないんです。マージちゃんが性成熟をした途端に妊娠をしたよう。ヘルパーが危機感を覚えるのも当然です。
さて、グースくんとマージちゃんが迎えられたO家は、「両親の喧嘩が減った」とSくんが笑いながら教えてくれました。共通の話題が増え、会話をする機会も増えたからでしょうか。動物が苦手だったSくんは、グースくんとマージちゃんとの暮らしを楽しんでいます。
グースくんは1歳半ぐらいまで乳離れができず、事あるごとにマージちゃんのお乳をちゅーちゅー。マージちゃんも嫌がらずに授乳させます。やっぱりお母さんですね。でもご飯やおやつの時は、マージちゃんが優先。グースくんはマージちゃんがもらうまで後ろで待機するんです。猫の掟でしょうか。
O家のお母さんはこう言うんです。
「グースとマージが来てくれてから、何だか赤ちゃんができたみたいで、優しい気持ちになれるんです」
お父さんは、グースくんとマージちゃんが来てから大好きなオリックスバファローズが優勝をしたので「招き猫」だと。
初めて猫を迎えたO家は困ったことがあると、元の飼い主の女性とO家の間に入ってくれた保護猫団体に相談します。例えば「じゃれ合っているんですか?それとも喧嘩ですか?」という初歩的な質問まで親切に答えてくれるので、とても有難いとお母さんは言っていました。ペットショップで迎えた子だと、なかなかこうはいきません。
とても人懐っこく、誰にでも挨拶ができるグースくんを見てお母さんは思うのだそう。「この子たちはとても大切にされていた」と。元の飼い主から引き継いだ命だからこそ、大切にしなくてはならないと気持ちを新たにするそうです。
高齢者の不適切飼育は今後も多く発覚するかもしれません。それを断罪するのはたやすいことです。しかし、どうすれば皆が優しい気持ちで暮らせるかを、一緒に考えていくことが大切ではないでしょうか。そうすれば、グースくんとマージちゃんのように穏やかに暮らせる猫たちも多く誕生するはずです。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)
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