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神戸市は二十日、阪神・淡路大震災の仮設住宅の入居者がゼロになった、と発表した。最後まで残っていた同市長田区の仮設入居者二世帯がこの日、災害復興住宅と再建した自宅にそれぞれ転居した。同市の仮設入居はピーク時には約三万一千世帯に上り、「全面解消に十年はかかる」との見方もあったが、個別対応などに力を入れ、震災丸五年を前に節目を迎えた。兵庫県内では西宮市と明石市で各一世帯が仮設住宅に残っているが、いずれも年内の転居見通しが立っている。
同市の被災者向け仮設住宅は、市外分を含め三百十三団地、計三万二千三百四十六戸を建設。一方で、恒久住宅として災害復興住宅が大量建設されたほか、民間賃貸住宅への一時移転などの支援策を進めた結果、今年九月末で転居先未定がなくなり、同市は年内解消の見通しを示していた。
仮設住宅は用地が確保しやすい郊外に多くが建設されたため、元の場所を離れなければならない被災者が相次ぎ、従来のコミュニティーが崩壊した。さらに、高齢者らの優先入居が結果的に仮設住宅の住民構成を偏ったものにし、「孤独死」など多くの課題や教訓も残した。
仮設解消を受けて記者会見した笹山幸俊市長は「一応の生活基盤はできたと思うが、復興住宅での新しいコミュニティーづくりなど未解決の問題も残っている。さらに暮らしの問題に力を入れ、本格復興に努めたい」と語った。
同市内では旧避難所の兵庫区・本町公園に一世帯が残っており、年内移転に向けて話し合いを継続中。西宮市の仮設に残る一世帯は今週中に引っ越しを予定、明石市の一世帯も市に仮設住宅の「返還届」を出しており、年内の引っ越しを予定している。
1999/12/21