激しい揺れに体を突き上げられた。未明の火事を取材した帰り。訳が分からず、闇に向かってシャッターを切っていた。
神戸市兵庫区の佐比江公園。ストロボの光で人々の姿が浮かび上がるのを、ファインダー越しに見た。手が止まった。着の身着のまま、身を寄せ合って呆然(ぼうぜん)としている。魂が抜け落ちたような表情。
「みんなとっさにあそこに集まろうと考えたんです。近くに学校もないし…」。地元自治会長の前田勝弘さん(59)は振り返る。ラジオ体操や盆踊りの会場だった公園が、避難場所として真っ先に頭に浮かんだという。
住民は九年前の三百二十世帯から二百五十世帯に減った。お年寄りが多く、震災後に途絶えた盆踊りなどの再開は難しい。活気も失われていく。
「だからこそ」と、前田さんらは月二回の清掃を欠かさない。「公園があったから救われたんや」。くま手を動かしながら、地域のぬくもりを確かめる。いつの間にか、井戸端会議が始まる。(写真部・藤家武)
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十度目の一・一七が巡ってくる。震災後の記憶に残る一枚を、「今」と重ねた。
2004/1/13