がれきの撤去が進み、街からほこりっぽさが消え始めたころ。神戸市東灘区の国道2号沿いで、三メートルはあっただろうか、大きなお地蔵さんが横たわっていた。
交通安全を願い、昭和初期に地域住民が建立した「国道地蔵尊」。戦災は免れたが地震で倒壊した。がれきの中に埋もれていたのを、住民らが復旧工事の業者に頼み、引き出してもらった。
コンクリートの手足は折れ、骨のようにも見える鉄筋がむき出しになっていた。山田美代子さん(60)らは「せめても…」と、布団を敷いた。
再建には近隣から一千万円を超す募金が集まり、三年後、御影石の新しいお地蔵さんが完成。長らく地面に横たわっていた先代は、砕いて足元に埋められた。
周辺にはマンションが建ち、新住民が増えた。地域が変ぼうする中で、二代にわたるお地蔵さんは、調味料を貸し借りするような、かつての深い近所付き合いの証し。
「八月の地蔵盆は、毎年盛大に開いていきますよ」と山田さん。昔も今も、お地蔵さんの周りに住民らが集う。(写真部・藤家 武)
=おわり=
2004/1/21