神戸港の一角に、トラックの出入りが激しい建物がある。ポートアイランド2期で港運大手の上組(神戸市)が運営する多目的物流センター。倉庫は二〇〇三年四月に開業後、すぐ満ぱいになり、今年一月に増設した。
人気の理由は、隣にあるコンテナターミナルとの一体運営。船から降ろした輸入貨物を運び込み、保管や仕分け、こん包、配送まで請け負う。日本の港湾では初の仕組みとなった。
これまでは物流施設を内陸部に置く企業が多かった。港から運ぶ費用はかさむが、港湾用地の賃借料が高かったからだ。
しかし長引く地価下落で賃借料も下がり、貨物が減った神戸港では用地も余っていた。上組の花田輝夫・物流事業本部長は「港だからできた、物流の一貫システム。貨物が戻り始めた」と話す。
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物流施設ができれば、港を使う貨物が増える。神戸市は一九九七年、港湾関連用地の利用条件を緩和した。倉庫業や船会社など、港に直接かかわる企業しか使えなかったのを、一定以上の貨物を船で運ぶ企業も対象に加えた。港湾施設の使用料なども値下げした。
上組は一九九八年、生活雑貨販売の良品計画(東京)と共同で、輸入品の集配センターを開設。その後、外資系のがん具チェーン・日本トイザらスや、家具販売のニトリなどの進出も決まった。
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貨物が貨物を呼びこむ相乗効果も表れている。
海外で日本製への需要が多い、油圧シャベルなどの中古建設機械。二〇〇二年に大永商事(神戸市)が六甲アイランドに輸出拠点を設け、翌年には建機大手コマツの関連会社・コマツクイック(横浜市)がポートアイランドに国内最大級のオークション(競売)会場を開いた。
品定めも船積みも一カ所でできる便利さから、世界の建機買い付け担当者が神戸を訪れるようになった。その吸引力に、同業他社も注目。これまで六社が進出した。
「建機の物流拠点がこれだけ集まる港は、ほかにない」とコマツクイック関西支店の城戸邦彦部長。昨年の神戸港の建機輸出額は千六百七十三億円と前年より46・1%も増えた。
市みなと総局の金谷勇一主幹は「航路が充実し、用地に余裕があったことも成功の要因。今後も誘致に取り組み、攻め続ける」と意気込む。積み降ろしだけでなく、物流拠点にできる港。また一つ、強みが増えた。
2005/2/9