新たな強みを磨くことで、再興の道を歩み始めた神戸港。産業基盤としての魅力をさらに高めていくには、何が必要か。港湾施策をけん引する官民トップ、神戸市みなと総局の小柴善博局長と日本港運協会会長の尾崎睦・上組会長に聞いた。
▼神戸市みなと総局長 小柴善博氏 神戸の特色発信し誘致
十年の施策と成果は
「岸壁などのハード面は二年で復旧できたが、貨物が戻らず、港湾施設の賃貸料を下げるなどソフト面の施策を展開した。一番大きかったのは、神戸港埠頭公社が所有するバース使用料を二〇〇二年に三割削減したこと。また内航コンテナ航路を増やすため、クレーン使用料を半減し、外航バースの利用を促した」
「一九九七年の規制緩和で、港湾関連の免許を持たない企業も港湾用地を借りられるようにした。以来、約六十社が進出しているが、半分は規制緩和の結果。こうした策が奏功し、コンテナ取扱量は〇三、〇四年と連続して増える見込みだ」
増勢を加速するには
「(外国間の輸送を中継する)トランシップ貨物の減少は底を打ったと思う。今後は(神戸のみを経由する)純輸出入と内航の貨物を増やすのが課題。港で貨物をつくり出す仕組みも必要で、物流センターや工場を積極的に誘致したい。他府県は思い切った誘致支援策を打ち出しており、われわれも具体的な話に応じて検討したい」
「港湾で働く方が、高い技術力を伝統的に持っておられる。その点のPRが不足していると思う。神戸ならではの特色を発信し、誘致にもつなげたい」
スーパー中枢港湾にはどんな姿を描くか
「西日本のハブ(拠点)港として、いかに瀬戸内から貨物を呼び込めるかが重要。国が打ち出す(複数のコンテナターミナルを統合した)メガターミナルを神戸港でも育成し、コスト削減を着実に進める。大阪港との連携は、情報基盤の共有がポイントになると思う」
▼日本港運協会会長 尾崎睦氏 サービスは官民一体で
震災後のコンテナ取扱量減少をどう見る
「もともと九州や瀬戸内海、アジア各国からの中継港として伸びてきたが、復旧に努めている間に韓国・釜山などの港湾が整備され、その地位を奪われた。日本国内の港湾整備が進み、地方コンテナ港湾の数が六十七にも達したことも拍車をかけた」
現場で実感する神戸港の強みは
「コンテナターミナルは一時間に四十-四十五個のコンテナをさばけるが、海外では二十五-三十五個が目いっぱい。荷役作業の効率では世界のどの港にも勝っている」
スーパー中枢港湾では、複数の港運事業者によるメガターミナルの共同運営などを求めている
「国際競争力を高めるには民間だけでなく、国の関係機関や港湾管理者の市などが一体となった港湾サービスを実施するべきだ。税関などの機関の二十四時間オープンもやってもらわないといけない」
必要な施策は
「労務費はこれ以上削れない。港湾利用の総費用を下げるには思い切って国費を投入し、(企業が支払う)ターミナル使用料を無料に近い水準にすべき。そうすれば、三交代による二十四時間稼働が可能になる。貨物の増加による利益で港湾労働者の福利厚生を充実させられるし、他のコスト削減にも還元できる」
「港のコストが下がれば、アジアに流出している日本の製造業を呼び戻すのに役立つ。内航の規制緩和が進めば、地方港の活性化にもつながる。神戸港は再生の一歩を踏み出した。夢を持てる港に復活するよう、かじを取りたい」
(足立 聡)
=おわり=
2005/2/12