「全体像が不透明だ」
一月に東京で開かれた会合。日本港運協会会長の尾崎睦・上組会長は、国土交通省などの幹部を前に語気を強めた。
指摘したのは、国交省のスーパー中枢港湾構想。「アジア主要港をしのぐコストやサービス」を目標に阪神港(神戸・大阪港)、京浜港(東京・横浜港)、伊勢湾(名古屋・四日市港)に重点投資する。コストの三割減と荷扱い時間の短縮を目指す。
しかし尾崎会長は、政府側をけん制した。「コスト減はまことに結構。だが、労務費はもうこれ以上、下げられない」
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貨物量が低迷する神戸港。二〇〇一年の港湾運送業の従業者数は五年前に比べ44・3%も減少。沿海海運業も35・1%減った(市調べ)。
スーパー港湾の目玉として国交省は、複数のターミナルを一体運営する「次世代高規格コンテナターミナル」を掲げる。今春からポートアイランド2期では上組など五社による「神戸メガコンテナターミナル」が実験台となる。「どれだけコストが下がるか調べる」(奥田薫・近畿地方整備局調整官)狙いだ。
だが港湾関係者の間では「一体運営だけでコストの三割減は不可能」との見方が強い。次は、労務費削減では-との予測に、尾崎会長は「思い切って国費投入しかない」と訴える。
過去、数多くの労働争議の舞台となった港湾。八年前にも規制緩和反対を掲げ、神戸など全国の主要港で二十四時間ストが打たれた。
国交省はスーパー港湾を「労務費削減のためではない」とするが、雇用維持の施策を掲げているわけでもない。現在、港湾関係労組は表立って反対していないが、労働問題がこじれれば、港の競争力は再び低下する。
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スーパー港湾に神戸とともに選ばれた大阪港。計画では人工島・夢洲に三バースが連なるメガターミナルをつくり、港運十四社で運営する。「港全体を活性化し雇用を創出するのが課題」と大阪市港湾局の徳平隆之計画課長。今後、物流情報システムの一本化など神戸との広域連携も進める。
しかし国交省が今後、どんな改革を求めるか、ターミナル運営の十四社にも読めない。一角を占める郵船港運(大阪市)の片岡良治社長は「港湾労働者が安心して働けるかどうかの情報がない」と指摘する。
動き出した日本の港湾復活。しかし片岡社長は「忘れないでほしい」と力を込める。「国策である以上、合理化で職を失う人の受け皿も必要。現場の実態に即した施策を考える時期がきている」
2005/2/11