山と海とにはさまれて、神戸は坂の町である。
その空を超高層ビル群が突き刺す。なだらかな斜面で暮らし慣れてきた人々には、かなり鋭角的な印象を与える。
市消防局が把握する100メートル以上の超高層ビルは34棟と、阪神・淡路大震災の前から20棟近くも増えた。全体の半数以上の21棟がマンション。さらに数棟が建設中だ。
地価下落や都心回帰、国の都市再生政策による建築の規制緩和が“摩天楼化”を後押しした。
不動産業界では20階以上の建物を「タワーマンション」と呼ぶ。今年1~9月、神戸市内で発売された新築マンションの総戸数の3割近くが、これに当たる。阪急不動産(大阪市)は「関西圏のオフィス需要の低迷」も増加要因に挙げる。
地域のランドマークを目指し、デザインには工夫を凝らす。眺望が売り物の超高層だが、「日照や眺望を遮る」と、地元とのあつれきもある。
神戸市はようやく高さの規制に乗り出したが、抗しようもない速さで、日ごとフロアが積み上げられる。山と海が遠ざかっていく。(長沼隆之)
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震災とその後の復興は見慣れた風景を一変させた。あの日から間もなく15年。被災地の「気になる景観」を訪ねた。
2009/12/7