神戸市長田区駒ケ林町。港に近く、漁師町の面影を今も残す。
六間道(ろっけんみち)の商店街を横切り、路地に足を向ける。幅2メートルにも満たない細い道に木造の長屋が並ぶ。ゆったりとした時間が流れる。
所狭しと並ぶ植木鉢、軒下には物干しざおと洗濯物、お地蔵さん…。昔懐かしい生活の香り。いつしか安心感に包まれていく。
住民とともに路地を生かしたまちづくりに取り組むコンサルタントの松原永季(えいき)さん(44)は、築120年の古民家を買い取り、事務所にした。
「ええ天気やねえ」。通り掛かった女性が松原さんに声を掛けた。「狭い路地が声の掛け合い、人の触れ合いを生む。車が入り込んでこないし、高齢者にも優しい町です」と松原さん。
課題もある。震災で倒れた家屋が撤去された後、法的な接道条件の問題や、複雑な権利関係などで再建のめどが立たない更地がモザイク状に残る。広場にした所もあるが、多くは放置されている。
「住民合意は難しいが、防災面の工夫をして、路地の良さを残したい」。松原さんは説明会などで周知を図る。
長屋のすき間から見上げる空は細長い。すぐ北側に迫る再開発ビル群。喧騒(けんそう)の中で、街は少しずつ姿を変える。時とともに、何かが生まれ、何かが消える。(長沼隆之)
2009/12/8