当時、私はジュンク堂書店三宮店の店長でした。神戸市西区の自宅からすぐ駅に向かいましたが、地下鉄は不通。自転車で三宮へ走りだしました。目を疑う光景を眺めながら、三宮センター街の店の前に着いたのは4時間後。崩れ落ちたアーケードを見たときには「自分も会社も終わりだ」と思いました。
非常口から中に入ろうとしても、倒れた本棚からあふれた本が押し寄せ、体一つ入るほどしか扉は開かない。地下にあった店には消防の放水が流れ込み、床上20センチは水浸しの状態。40万冊のうち3分の1がぬれてしまいました。
従業員を各店舗に集め、返品する本を箱に詰めて、新しい本を棚に運ぶ。その作業を何カ月繰り返したでしょうか。思うようにはかどらず、疲れもピークに達していた。そんなとき、様子を見にきたお客さまからの「頑張ってな。待ってるで」という言葉に力をもらいました。絵の左上で頭を下げているのが私です。
2001年に定年退職するまで、多くの従業員を抱え、「生き残らなければ」とがむしゃらに走ってきました。震災は私たちの原点。感謝の気持ちが原点なんです。(聞き手・貝原加奈)
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「震災の絵」展は2010年1月17~30日、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開く。
2010/1/8