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兵庫県と神戸市は、阪神・淡路大震災で負傷し、障害が残った「震災障害者」と親を失った遺児について、初の実態調査で聞き取った計46人の証言を「記録集」にまとめる作業に乗り出した。震災から16年間、支援から取り残されてきた障害者らの声を伝え、今後の負傷者対策に生かす。本年度中に作成し、遺児が1500人を超えた東日本大震災の被災地に送ることも検討している。
県と神戸市は昨年、障害者手帳の申請書類などで震災が原因と認められる身体・精神・知的障害者計349人(死亡者を含む)を特定。遺児は育英資金の受給者を基に419人と公表した。
このうち、身体障害者87人から回答を得たアンケートでは、約半数が救出までに5時間以上かかり、障害認定に1年以上を要したことなどが判明した。回答した遺児70人の半数近くは「専門的な心のケアが必要だった」とし、うち約4割が治療や相談を受けていた。
聞き取りは、こうした課題を掘り下げるために行った。同意が得られた身体障害者27人(男性12人、女性15人、平均年齢72歳)と遺児ら19人(うち保護者12人)から、被災後の経過や現状、必要だった支援などについて、それぞれ1時間半~2時間話を聞いた。
これまで人数さえ分からず、見逃されてきた障害者らには「実情を知ってほしい」との思いが強い。県などは証言をつぶさにまとめ、人と防災未来センターなどで閲覧できるようにする方針。
また東日本大震災からの復興の参考にしてもらうため、記録集を岩手、宮城、福島県などに送る考え。アンケートを含めた実態調査の報告書は既に送付済みという。(井関 徹)
2011/9/15