【イーエスプランニング(神戸市中央区)不動産事業サポート 藤岡義己さん(56)】
神戸・三宮の地図を広げて社長の藤岡義己(56)が中心部を指さした。「この辺りでうちの管理する駐車場が多い」。JR神戸線の北側、店舗が密集する繁華街のエリアのシェアは3割を超す。
神戸を中心に約100カ所の駐車場を扱う。コインパーキングや機械式立体駐車場の運営をオーナーから受託。1分単位の料金体系やカード不要のポイント管理システム、キャッシュレス精算など「従来にない」サービスを導入し、稼働率を上げてきた。
「手つかずのニッチな市場がある。そこを開拓すればいい」。そう気付かせてくれたのが、阪神・淡路大震災だった。
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デベロッパーや住宅メーカー勤務を経て1992年、33歳で起業。1級建築士の腕を生かした土地活用の建設コンサルタントだった。賃貸マンションなどの設計をこなす中、3年後に震災が発生。事務所のあったJR神戸駅近くのビルは損壊したが、幸い、事業はすぐに再開できた。
仕事は繁忙を極めた。復興需要でマンション建設などの受注が相次いだ。被災地の公共投資額は震災直後、前年の1・5倍に。96年の新設住宅着工件数は94年の1・9倍に膨らんだ。
藤岡は景気低迷や公共工事削減の状況を見据え、肌感覚でつかんでいた。「被災地は20年分の仕事を先食いしたと言われた。復興需要はすぐ消える」。予感は的中した。仕事は激減した。
そんな時だった。あちこちにできた更地が駐車場に変わり、大手のコインパーキングが広がった。その一方で地元業者が運営する立体駐車場は苦戦を強いられている。「大手にできないきめ細かなサービスや運営を導入すれば、収益は改善できる」と読んだ。
2001年に駐車場ビジネスを始めると、売上高は上昇に転じた。今では復興需要のあった震災直後と並ぶまでになっている。
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「利他業」。藤岡は駐車場ビジネスをこう表現する。駐車場があるからこそ人が集まり、地域が活気づく。「企業として何を大切にすればよいか。震災でその問いを突きつけられた」と振り返る。
今後、駐車場でどう顧客満足度を高めるか、思案を巡らせる。3月には新部門を立ち上げ、地主向けセミナーを開き、さらに新規開拓を進める。
「駐車場はいわば交通の結節点であり、コミュニティーの玄関口。神戸に必要な会社になる」。あの震災で藤岡の出した答えだ。
=敬称略=
(石沢菜々子)
▽イーエスプランニング 1992年創業。従業員80人。売上高約10億円。立体駐車場、コインパーキングなどの管理運営業務が8割を占め、残りはマンション管理や設計など。97年、県の新産業創造キャピタルに認定。
2015/1/15