旦旦的二十年
2008年は、タンタンにとっても、中国のパンダたちにとっても、苦難の年となった。5月12日、マグニチュード7・9の四川大地震が発生。死者・行方不明者は9万人超とされ、ジャイアントパンダの飼育・繁殖施設である臥龍パンダ保護研究センターも大きな被害にあった。
地震発生から3カ月後、王子動物園は全く別の緊張感に包まれていた。タンタンの出産が近づいていたのだ。日本国内での人工授精による出産は20年ぶり。初めての経験に、飼育員たちは24時間態勢で見守り続けた。8月26日午後3時46分、ついに赤ちゃんが生まれた。タンタンはしっかり胸に乗せている。
誕生日の前々日には北京五輪が閉幕したばかり。矢田立郎・神戸市長=当時=は「日本と中国の懸け橋となる“金メダル”」と喜んだ。私たちも、同園提供の映像に映る小さな赤ちゃんパンダを食い入るように見つめて喜んだ。
ところが、祝賀ムードは一転、街は深い悲しみに包まれる。29日午後、赤ちゃんは息を引き取ってしまったのだ。速報が入った編集局に、悲鳴が響いた。
もし大地震が起きていなかったら、中国の保護研究センターから技術者が応援に来てくれていたはずだったという。
わが子を亡くしたタンタンは大丈夫だろうか。翌日朝刊一面の記事には「死んだ赤ちゃんを取り出すと興奮したため、代わりにニンジンを与えたところ落ち着き、赤ちゃんを抱きかかえるしぐさをみせている」とあった。
2020/7/9