8月中旬、兵庫県の告発文書問題をめぐり、ある誤情報が交流サイト(SNS)の「X」で広く拡散された。斎藤元彦知事が認めたパワハラ行為などを「全て嘘」とする内容で、一部の政治家や著名人らが取り上げて広まった。誤情報や陰謀論は、一度否定されても復活して拡散されるとの調査結果もあり、注意が必要だ。(民意×熱狂取材班)
■インフルエンサーの参戦で1千万回超表示
きっかけは、ある漫画家のアカウントによる投稿。8月13日午前0時46分、テレビ報道を批判する文脈でこう記した。
「40万の革ジャンおねだりも高級旅館への宿泊もカニ全て嘘だった。其々の業者が嘘と証言。職員アンケート『20%が知ってた』も嘘。実際は斎藤知事のパワハラを見た者は1人もいなかった(調査委員会の解答)」
約7時間半後、この投稿を日本保守党の有本香・事務総長がXで引用。66万人のフォロワーに向け「全て嘘だったとは。なぜ嘘が作り出されたのか。首謀者は誰なのか。」と書き、8月21日までに約510万回表示された。起点となった漫画家のポストの表示回数も、同じ時点で約480万回に上った。
有本氏の投稿が拡散されたことを受け、経済学者やお笑い芸人、元アナウンサー、一部の兵庫県議らがメディア批判を絡めて賛意を示す投稿を発信。多数のフォロワーがいる「インフルエンサー」たちが参戦したことで、全体の表示回数は1千万回を超えた。
さらにこれらの投稿を基に、Xは人工知能(AI)による要約ニュースで「斎藤元彦知事のおねだり・パワハラ疑惑が全て虚偽と判明」などと流した。
これに対し、「事実ではない」と訂正を求める発信や、一次資料確認を訴える投稿が相次いだ。
事実関係はどうか。神戸新聞が公的資料や第三者調査委員会の報告書などを確認したところ、Xで拡散されたように疑惑が「全て虚偽」という根拠は見当たらなかった。
■検証①贈答品
贈答品については、2024年9月6日の県議会調査特別委員会(百条委員会)で、斎藤知事本人がカキやカニ、ワインなど一部物品を自宅に持ち帰っていたことを認め、「一生懸命作った方が『知事に食べてほしい』と厚意で持ってきてくれたもの。もらわないという判断を就任直後からするのは難しかった」と説明した。
革ジャンについても百条委の議事録に記録が残っている。皮革団体が知事室へ要望に来た際、斎藤知事は団体側が用意したものを試着し、「PRにいつか使いたいですね」と発言。後に返却された。
こうした経緯を踏まえ、弁護士6人による県の第三者委員会は調査報告書で「知事による贈答品の要望とも受け取られる発言が複数の案件で見受けられた」と指摘。一方で、「贈収賄と評価できるような事実はなかった」と知事個人への贈与は否定した。
当時、県人事課が定めていた職員向けのガイドラインでは「(贈答品は業者等が直接持参しても)公務員としての立場を説明し、絶対に受け取らない」と記載。24年12月には一連の問題を受けて新たなガイドラインも策定され、個人で消費する食品などは原則受け取らないとした。
■検証②高級旅館の宿泊
高級旅館の宿泊については、職員アンケートの回答に関連の記述があった。「知事の希望で県の旅費規定の額を上回る高級旅館を秘書課が手配し宿泊した」との内容で、こちらも百条委の議事録などで経緯が確認できる。23年9月に当該の旅館に知事が宿泊したのは事実だが、超過分は斎藤知事が自身で支払ったと述べている。
■検証③パワハラ
パワハラを巡っては「被害者がいない」との投稿もあったが、百条委では幹部職員が理不尽な叱責を受けたと感じている」などと証言した。第三者委は調査した16件のうち、「机をたたいて叱責した」行為など10件をパワハラと認定。これを受け、斎藤知事は25年3月26日、職員に対する謝罪の意を表明している。
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論争が続く中、発端となった漫画家のアカウントは、拡散した投稿に関連づける形で漫画作品を宣伝(その後、削除)。神戸新聞は公式サイト経由で投稿や宣伝の意図について20日に取材を申し込んだが、返答はなかった。日本保守党の有本事務総長にも投稿の根拠などを尋ねたが、回答はなかった。
























